第55回神奈川県美術展に行ってきました

第55回神奈川県美術展を見に、神奈川県民ホールギャラリーに行ってきました。会場の入り口では、ピカソと岡本太郎、二人の巨匠が両手を広げて、笑顔で出迎えてくれました。

PICASSOとTARO 村上勉さん

そういえば、岡本太郎は神奈川県にゆかりがあり、川崎市生田緑地の岡本太郎美術館では、毎年TARO賞が開催されています。TARO賞展ほどではありませんが、 神奈川県美術展にも、なかなか岡本太郎の精神が感じられるような気がします。少なくとも、美しい風景画や、上品な静物画、きれいな美人画といった作品は、ほとんど選ばれていないようです。

岡本太郎美術館といえば、横山芙実さんの作品も入選していました。

楽土を望みて 横山芙実さん

以前、横山さんご本人とお話する機会があり「どうして茶色を多く使われているのですか?」とお聞きしたところ、「茶色の岩絵の具が一番安いからです」と明快なお答えをいただきました。岡本太郎というよりも、棟方志功を連想させる作風なのですが、エネルギーは岡本太郎にも棟方志功にも引けを取らないような感じがします。まだお若いのに、迷いが感じられない絵でお見事です。

単色でエネルギッシュな作品と言えば、今年も磯野悦郎さんの作品が入選していました。

311 鎮魂歌 磯野悦郎さん

今年のかわさき市民アンデパンダン展では、磯野さんにしては珍しく中途半端に色を使われていたので違和感を覚えたのですが、やはり磯野さんの作品は、黒一色のほうがインパクトが強く感じられるようです。東北の震災関連の作品が、次第に少なくなってきているようですが、天災は忘れたころにやってくる、ということわざもあるので、気をつけたいと思いました。

駅をモチーフにした作品も気になりました。JR南武線の平間駅の改札口の向かいにはコンビニエンスストアがあって、確か、店の前には椅子が3-4脚おいてあります。夜明け前の寒い朝、始発のバスを待つ間、椅子に座ってホットコーヒーを飲んだことを思い出しました。

街灯り 秋山遥夏さん
オリジナルの小田急線の改札口 藤田淳子さん

オリジナルの小田急線の改札口とのことですが、この雰囲気は本線ではなくて多摩線ではないかなと想像しました。駅の改札口には、いつも人が行きかっているのを見慣れているだけに、人が一人もいない改札口の風景、というだけで、なぜだか新鮮な感じがすることに少々驚きを感じました。

今年は、すこしゆるい感じのする作品も目につきました。モデルのお爺さんが出来上がった絵をみて、「私以外雀じゃないの」とつぶやいた様子を想像して、思わず吹き出しそうになりました。一羽一羽の雀のしぐさも豊かです。

私以外雀じゃないの 河村拓海さん
春の記憶 伊藤ちさとさん

この絵のゆるさ加減も中途半端ではありません。どこまでゆるくしても絵画として成り立つのか、挑戦しているのでしょうか? 大きな画面に、淡い色の花々がゆったり描かれています。しかも、周りを赤い枠で囲んでいて、ふんわりとした中に一応のまとまりが感じられました。

Connection 2019

なぜだか、仮装した人たちが、綱引きをしている最中のようなのです。一番左の人の足が、画面からはみ出しています。しかも勝負は、この人のつま先にかかっているようなのです。最初からはみ出すつもりで描いたのか、描いている途中からはみ出さざるを得なくなったのか、興味は尽きないところです。

今年のTARO賞を見てからというもの、段ボールの作品が妙に気になるようになりました。さて、この段ボールには元々何が入っていたのだろうか? ペットボトルの水ではなかろうか? いやいやAmazonの箱ではなかろうか? などと考えつつ見るのは邪念でしょうか?

邪念ハ無心ヲ所望スル LUNA..CLIP..さん

段ボールほどではないにしても、この作品にも材料費はあまりかかっていないようです。そういえば、神奈川県は、箱根町の寄せ木細工も有名ですね。

DREAMS -ここからきた- 西村卓さん

小さな部品を組み合わせて、ひとまとまりの巨大なシステムを作り上げるのが、現代のトレンドなのかもしれません。でもよく見ると、つぎはぎだらけ、だったりすることが、よくあるんですよね。