青木三篠個展-粛々たるおしまいを僕らに-に行ってきました
青木三篠個展-粛々たるおしまいを僕らに-を見に、コート・ギャラリー国立に行ってきました。JR中央線、国立駅のnonowa口から出て、食料品売り場を抜けて、道路を渡るとすぐに、個展の会場が見えてきました。歩いて1分ほど。
青木さんの個展を拝見するのは、ギャラリーb.トウキョウでの「珊瑚城の夢は醒めない」以来です。
個展会場に入る手前のロビーにも一枚絵が展示されていました。この絵は、旧約聖書のアブラハムとその息子イサクの物語を描いたものだそうです。神の命に従って、息子を犠牲にしようとするシーンでしょうか? タイトルの「Q13」は、イサクをもじってつけたとのこと。
展示会場に入ると、青木さんご本人が出迎えてくださいました。個展のタイトルともなった「粛々たるおしまいを僕らに」は、今年の7月の豪雨のときに、出身地の広島県での多くの被害が伝えられる中で、まるで何もなかったかのように毎日を粛々と暮らすご自身に、歯がゆい思いをしながら、この作品を描いていたとのことです。背景の十字架に見えるのは窓の枠だそうですが、犠牲者への祈りを表しているようにも見えます。くっきりとしたコントラストや、左右対称な画面構成は、青木さんのこれまでの作品には、あまり見られなかったように思いました。
ちなみに、画号として用いておられる「三篠(みささ)」は、ご実家の近くの三篠神社から取られたとのこと。
「正方形のつくり方」という作品は、「博士の愛した数式」という小説からヒントを得たそうです。そういわれてみるとこの絵は、事故のために短い時間しか記憶を保つことができなくなってしまった数学者の博士が、新しくやってきた家政婦さんの息子の頭をなでて、「良い形だ」といって平方根を意味する「ルート」と名付けるシーンを想い出させます。小説の中では、家政婦さんが博士の話に感銘を受けて、身近な数字のなかから、素数を見つけ出しては喜ぶというシーンがありましたが、青木さんも、日常に潜んでいる、素数を見つけ出して、絵のモチーフに仕立ててしまうのが上手なのかもしれません。上手というよりも、お見事です。この小説の内容を、「正方形のつくり方」ととらえてしまうこと自体、「あっ、そういう読み方もできるの?」と思わず感心してしまいました。例えば、地面にうっすらと描かれている半円形は、博士の愛した数式である、eiπ+1=0を連想させるように、青木さんの絵には、さりげなく秘密が隠されているようです。
今回の個展では、油彩画だけではなく、線画(ドローイング)の作品も数多く展示されていました。この作品は、まさに、身近な紙切れから、正方形を作ろうとしているところなのかもしれません。後ろには、赤い花がたくさん描かれています。
青木さんは、大学を卒業されて、社会人になられたとのこと。社会に出てクルクル回っているうちに、いつの間にか角がとれて丸くなってしまうのが普通で、それはそれで大切なことかもしれません。
でも作品を見る者にとって、青木さんの作品は、なぜだか、この絵に描かれた小さなろうそくの灯のように、心を照らしてくれるものがあるような気がしています。どうか「粛々とおしまい」にしたりしないで、またの機会には、是非、青木さんが見つけられた、新しい素数や、正方形を拝見できたらいいな、と楽しみにしています。





