大岩オスカール、「光をめざす旅」を見てきました

金沢21世紀美術館で企画展、大岩オスカール「光を目指す旅」を見てきました。

金沢まで実際にやってきて、よくよく古いものと新しいものが混じり合っている街であることに感心しました。21世紀美術館のような現代的な建築もあれば、一歩路地に入り込むと、江戸時代にタイムスリップしたような建物が並んでいる場所があったりします。古い木造の建物の中に一歩足を踏み入れると、中はギャラリーになっていて、九谷焼や金箔のような伝統工芸の技術を使って、現代の作家さんたちが新しい作品作りに挑戦していたりします。

展示会場の入り口

大岩オスカールさんはブラジル生まれで、少年時代から大学まではサンパウロで過ごしたそうです。日本にやってきたのは、大学を卒業した後のこと。最初のころは、建築会社に勤めながら絵を描いていたそうです。そのせいか、日本の風景を見るときに、彼独時の視点があるようです。

首都高を走る船, 2016 油彩/キャンバス

金沢という地でこの絵を見たからなのかもしれませんが、一枚の絵の中に古いものと新しいものが渾然一体として描かれているところが、大岩オスカールさんの絵の面白いところなのかもしれない、と思いました。運河を使った水運交通が江戸時代の物流の中心であったのに対して、現代の物流の中心は高速道路。異なる時代の主役が一枚の絵の中に積み重ねるように描かれているようです。

絵を見ているときには、これは現場で作家の頭の中に去来したイメージを描いたものなんだろう、と理解したのです。ところが、展覧会を見た同じ日の夜のニュースでは、2020年東京オリンピックで予想される交通渋滞の緩和のために、試験的に運河を航行する水上バスで通勤客を運ぶ実験が行われているとのこと。今でもまだ、水上交通が機能として生き残っていたことにびっくりです。大岩オスカールさんは3年前、この絵を描いていたときに、いずれまたこうなるだろうということを、すでに予見されていた?

美しい茅の家, 2009 油彩/キャンバス

小さくてわかりにくいのですが、樹の枝のあちらこちらに、昔の日本の道具類の数々が描かれています。かまどや囲炉裏、桶や脱穀機でしょうか? これは、ほんの少し前まで、日本人の生活が自然と渾然一体になっていたことを、なぜだか、ブラジル育ちの大岩オスカールさんが、表現しようと試みたようです。

ライトショップ, 2018 油彩/キャンバス

ちょっと古い街の電気屋さんの店内から光が発散しているようです。タイトルは「ライトショップ」。つい20年から30年前には、街の電気屋さんが、今よりももっとたくさん、あちらこちらにありました。そういわれてみると、当時の街の電気屋さんでは、単に電気製品を売っていたのではなく、人々の夢や希望を売っていたような気もします。ということを、何故だか当時日本にいなかったはずの大岩オスカールさんは良くご存じのようです。

光をめざす旅, 2018 油彩/キャンバス

サンパウロ、東京、ニューヨークと、大岩オスカールさんの旅は、混沌とした現実の中に身をおきながらも、光をめざす旅だったのでしょうか? そして、めざす光は見つかったのでしょうか? これから、私たちはどこに向かっているのでしょうか? 展示会場では大岩オスカールさんのインタビューの様子がビデオで流れていました。光は、自分たちの心の中にあるのだ、というようなことをおっしゃっていたようです。少し勇気づけられました。


黒い猫と白いうさぎ

少し余談です。展覧会場では、黒い猫と白いうさぎの立体作品を目にしました。会場外側の廊下です。立体作品は少なかったので、記憶に残りました。

シャドウキャットとライトラビット, 2018 ブロンズ

そういえば、黒い猫と白いうさぎのモチーフは、展示会場の外側、廊下の大きな壁画にも出てきました。

壁画ドローイング<<森>>

さて、いったいこれは何を表現しているのだろうと気にはなっていたのですが、いつの間にか忘れてしまいました。ところが、しばらくたって山種美術館を訪れ、速水御舟展を見ていた時に、屏風絵に描かれた同じ黒い猫と白いうさぎのモチーフを見かけて、はっとしたのでした。ちなみに、この作品のみ写真撮影が可でした。果たしてこれは偶然なのでしょうか?

  
速水御舟、翠苔緑芝(部分)/山種美術館