Archive for the ‘企画展’ Category

大岩オスカール、「光をめざす旅」を見てきました

木曜日, 7月 25th, 2019

金沢21世紀美術館で企画展、大岩オスカール「光を目指す旅」を見てきました。

金沢まで実際にやってきて、よくよく古いものと新しいものが混じり合っている街であることに感心しました。21世紀美術館のような現代的な建築もあれば、一歩路地に入り込むと、江戸時代にタイムスリップしたような建物が並んでいる場所があったりします。古い木造の建物の中に一歩足を踏み入れると、中はギャラリーになっていて、九谷焼や金箔のような伝統工芸の技術を使って、現代の作家さんたちが新しい作品作りに挑戦していたりします。

展示会場の入り口

大岩オスカールさんはブラジル生まれで、少年時代から大学まではサンパウロで過ごしたそうです。日本にやってきたのは、大学を卒業した後のこと。最初のころは、建築会社に勤めながら絵を描いていたそうです。そのせいか、日本の風景を見るときに、彼独時の視点があるようです。

首都高を走る船, 2016 油彩/キャンバス

金沢という地でこの絵を見たからなのかもしれませんが、一枚の絵の中に古いものと新しいものが渾然一体として描かれているところが、大岩オスカールさんの絵の面白いところなのかもしれない、と思いました。運河を使った水運交通が江戸時代の物流の中心であったのに対して、現代の物流の中心は高速道路。異なる時代の主役が一枚の絵の中に積み重ねるように描かれているようです。

絵を見ているときには、これは現場で作家の頭の中に去来したイメージを描いたものなんだろう、と理解したのです。ところが、展覧会を見た同じ日の夜のニュースでは、2020年東京オリンピックで予想される交通渋滞の緩和のために、試験的に運河を航行する水上バスで通勤客を運ぶ実験が行われているとのこと。今でもまだ、水上交通が機能として生き残っていたことにびっくりです。大岩オスカールさんは3年前、この絵を描いていたときに、いずれまたこうなるだろうということを、すでに予見されていた?

美しい茅の家, 2009 油彩/キャンバス

小さくてわかりにくいのですが、樹の枝のあちらこちらに、昔の日本の道具類の数々が描かれています。かまどや囲炉裏、桶や脱穀機でしょうか? これは、ほんの少し前まで、日本人の生活が自然と渾然一体になっていたことを、なぜだか、ブラジル育ちの大岩オスカールさんが、表現しようと試みたようです。

ライトショップ, 2018 油彩/キャンバス

ちょっと古い街の電気屋さんの店内から光が発散しているようです。タイトルは「ライトショップ」。つい20年から30年前には、街の電気屋さんが、今よりももっとたくさん、あちらこちらにありました。そういわれてみると、当時の街の電気屋さんでは、単に電気製品を売っていたのではなく、人々の夢や希望を売っていたような気もします。ということを、何故だか当時日本にいなかったはずの大岩オスカールさんは良くご存じのようです。

光をめざす旅, 2018 油彩/キャンバス

サンパウロ、東京、ニューヨークと、大岩オスカールさんの旅は、混沌とした現実の中に身をおきながらも、光をめざす旅だったのでしょうか? そして、めざす光は見つかったのでしょうか? これから、私たちはどこに向かっているのでしょうか? 展示会場では大岩オスカールさんのインタビューの様子がビデオで流れていました。光は、自分たちの心の中にあるのだ、というようなことをおっしゃっていたようです。少し勇気づけられました。


黒い猫と白いうさぎ

少し余談です。展覧会場では、黒い猫と白いうさぎの立体作品を目にしました。会場外側の廊下です。立体作品は少なかったので、記憶に残りました。

シャドウキャットとライトラビット, 2018 ブロンズ

そういえば、黒い猫と白いうさぎのモチーフは、展示会場の外側、廊下の大きな壁画にも出てきました。

壁画ドローイング<<森>>

さて、いったいこれは何を表現しているのだろうと気にはなっていたのですが、いつの間にか忘れてしまいました。ところが、しばらくたって山種美術館を訪れ、速水御舟展を見ていた時に、屏風絵に描かれた同じ黒い猫と白いうさぎのモチーフを見かけて、はっとしたのでした。ちなみに、この作品のみ写真撮影が可でした。果たしてこれは偶然なのでしょうか?

  
速水御舟、翠苔緑芝(部分)/山種美術館

Attending Tea Ceremony hosted by Tom Sachs

水曜日, 5月 29th, 2019

I have attended Tea Ceremony hosted by Tom Sachs from New York City held in Tokyo Opera City Gallery. He seems an orthodox successor of Sen no Rikyu, the founder of Tea Ceremony about 400 years ago, proposing a unique style in hospitalization of guests with a slight flavor of contemporary art.

Entrance of the tea ceremony

It seems preferable for guests, especially for beginners, to learn the basic flow of tea ceremony in advance by watching video. But actual flow of ceremony could flexibly change depending on season, weather or the relationship between guest and host.

Video to learn the basic flow of tea ceremony

Tea utensils are important part of tea ceremony.  So take your time to check and enjoy the items manually prepared by the host one by one from industrially ready-made products.   

Items including tea cup, spoon and the others are all hand-made by the host expressing hospitality

Carefully watch the selection of hanging scrolls because it could contain important nonverbal message from the host. 

The circle probably meaning harmony of the world

It might be a good manner for guests to show gratitude by sending short message to the host using social media before or soon after leaving the ceremony. 

20th DOMANI・明日展に行ってきました

日曜日, 2月 25th, 2018

「20th DOMANI・明日展」を見に、国立新美術館に行ってきました。

DOMANI2018_01 敷地の入口の看板

「DOMANI明日展」というのは、「新進芸術家海外研修制度(文化庁)」を使って海外で研修を積んだ若手芸術家の成果の発表会で、今回が20回目なのだそうです。展示会場の入口には、「全作品撮影OKです」との表示がありました。昨年度とはルールが変わったようです。時代の流れでしょうか?

DOMANI2018_02 田中麻記子さん、「Critique」、13×14 cm.

田中さんは、フランスのパリに派遣されたようです。パリに移ってから、絵のスタイルが変わったとのこと。異文化と接した影響でしょうか? この絵は、一枚の絵の中に「変化前」と「変化後」とを同居させて描いてみたのかもしれません。パリといえば、19世紀後半、西洋の画家たちが、一斉に日本の絵画に影響を受けた「ジャポニスム」を思い出しました。田中さんは、日本人なのに、パリに行って初めて、浮世絵のような線画に目覚めたというのは面白いですね。

DOMANI2018_03 田中麻記子さん、「Band」、10×15.7 cm.

この絵をみると、葛飾北斎の「北斎漫画」を思い出しました。一人一人の動きが楽しい。田中さんは、「現代の北斎」なのかもしれませんね。

DOMANI2018_04 三宅砂織さん、「The missing shade 40-1」、56 x43 cm.

三宅さんは、Y氏が残された、アルバムやスクラップブックなどからモチーフを得て、写真の技法で作品を制作されています。Y氏というのは1913年生まれとのこと。おじいさんか、ひいおじいさんの世代でしょうか? Y氏は、1936年に開催された、ベルリンオリンピックに体操の選手として出場されたとのこと。今でもそうですが、当時としても、恐らく大変な名誉なことだったに違いありません。

DOMANI2018_05 三宅砂織さん、「The missing shade 35-1」、56 x43 cm.

ところが1936年のベルリンオリンピックは、別名ヒトラーのオリンピックとも言われており、その後、1939年からは第二次世界大戦が始まっています。オリンピック選手だったY氏も、戦争のために一兵士となられたようです。軍隊の中でも、尺八を吹く機会があったかと思うと、少しは気持ちが和むような気がします。

おりしも、「DOMANI明日展」の会期中に、お隣の韓国では、冬季オリンピックが開催。その一方では、戦争の足音が聞こえてくるようなできごとが、次から次へと報道されています。どうか、歴史が繰り返さないように、と祈るばかりです。

DOMANI2018_06 中谷ミチコさん、「空が動く」、83 x163 x6 cm.

これは、ずいぶんたくさんのカラスが描かれた絵ですね、と、うっかり通り過ぎるところでした。ちょっと、展示の仕方が、変わってますね、しっかりと木の枠に固定されている。絵の厚さが6 cm?、ちょっと厚いですね。

DOMANI2018_07 中谷ミチコさん、「あの山にカラスがいる」(部分).

中谷さんのこの作品は、実は絵ではありませんでした。黒いカラスは、黒い半透明の樹脂でできています。しかも、この樹脂は、画面から飛び出しているのではなく、画面の奥に埋め込まれていました。気が付いてみると、えっ、とびっくりです。思わず、あらためてすべての作品を見直してしまいました。

作り方は、粘土で型を作って、石膏を流し込んで、できたくぼみに樹脂を入れて固める…..何とも手間のかかる技法のようです。とはいえ、絵の具ではこのような光の屈折、透過を使った表現はできないので、手間をかけた分、その効果は確実に現れているようです。

それから、樹脂が固まる際の硬化収縮は問題にならないのか?とか、型を使うならば、ブロンズのようにいくつかの作品の複製が可能なのだろうか?とか、作品を鑑賞するには余計かもしれない疑問もふと頭をよぎってしまいました。

「クインテットIV 五つ星の作家たち」を見てきました

日曜日, 1月 14th, 2018

クインテットIV 五つ星の作家たち」を見に、損保ジャパン日本興亜美術館に行ってきました。良く晴れてはいましたが、気温は低く、冷たい風が吹き抜ける新宿の高層ビル群の間を通って、美術館の前に出ました。

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美術館建物の入り口の看板

エレベータに乗って、42階に向かいます。受付の前を通って、窓から外が見える廊下を歩き、展示会場の入り口に到着しました。この展覧会では、作品の写真撮影可とのこと、非営利でならば使用可とのことでした。

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船井美佐さん、「Hole/桃源郷/境界/絵画/眼底」

今回の作品のテーマは、「具象と抽象の狭間」なのだそうです。会場に入って迎えてくれたのは、丸い大きなアクリル鏡の作品でした。山や川や樹々などの様々な形にくりぬかれています。また、周囲には、蝶の形の鏡が配置されています。素材が鏡なので、展示会場の様子が反射して映りこんでおり、視覚的には多層な作品になっています。

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室井公美子さん、「Doxa I」

こちらは、素材としては油彩画のようですが、何が描かれているのか、判然としていませんでした。絵の具が垂れているようなところもあります。タイトルの「ドクサ」は哲学の用語のようですが、ますます、謎に包まれるばかりです。

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竹中美幸さん、「何処でもないどこか(境界に浮かぶ橋)」

こちらは、透明な樹脂に、少し色をつけて、丸い形に固めたものがちりばめられているようです。照明の光をきらきら反射してきれいです。水滴の動きのようなものが感じられました。

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青木恵美子さん、「お願い」

こちらは、アクリル絵の具が主なのでしょうか? 発色が鮮やかです。画面の大部分が単色のグラデーションのみで描かれており、画面の上部と、下部にアクセントとして別の色が使われています。はるかかなたの地平線やひろびろとした空間を連想しました。

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田中みぎわさん、「水の音」

遠目には、白黒写真かな、と思ったのですが、近づいてよく見ると、水墨画でした。川の水面に映った樹々の反射の表現が印象的です。

短い時間でしたが、良質で粒ぞろいの作品を拝見することができ、帰り道では心なしか、心温かく、さわやかな気持ちで会場をあとにすることができました。

岡本太郎とメディアアート展に行ってきました

土曜日, 12月 9th, 2017

岡本太郎とメディアアート展を見に、川崎市岡本太郎美術館に行ってきました

「岡本太郎とメディアアート展」を見に、川崎市岡本太郎美術館に行ってきました。今回は、生田緑地の正門からではなく、反対側の西口から入ってみました。ちょうど紅葉のシーズンで、落ち葉が階段に落ちていてきれいです。階段をおりていくと、芝生の広場の向こうに、白い「母の塔」が見えてきました。「ベラボー」な大きさですが、すっかり生田緑地の森に溶け込んでしまっています。まるで100年も200年も前から、そこに立っていたかのようです。

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美術館の入口の反対側、カフェの前あたりに、なにやら赤いヒトデのような形の巨大なオブジェが置いてありました。真ん中に目のようなものが付いていて、機械仕掛けで、目が閉じたり開いたりしています。岡本太郎が考えた「パイラ人」という宇宙人をモチーフにして、現代作家の高橋士郎さんが手がけたものだそうです。

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今回の「メディアアート展」では、展示会場での写真撮影が可能とのことでした。いつもは、常設展の会場となっているところで、企画展示が行われていました。現在、本来の企画展示室は工事中のようです。立体作品が展示してあるスペースには、岡本太郎の作品にプロジェクションマッピングの映像が投影されていました。色やパターンが時事刻々と、変化していきます。もともとは「樹人」という作品だそうですが、新しい技術との組み合わせで、新しい作品に生まれ変わったかのようです。この作品を制作したP.I.C.S.TECHというグループは2012年東京駅の3Dプロジェクションマッピングも手掛けられたとのことです。

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その近くには、光を発している別の作品がありました。この作品は、岡本太郎が生前、名古屋のデパートの外壁の装飾をデザインしたものを再現したものだそうです。

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会場の出口付近には、実際に名古屋のデパート、オリエンタル中村百貨店、の装飾に使われたときの写真が展示されていました。比べてみると、確かに同じ作品です。デパートそのものは、今はすでになくなっているようですが、アート作品は形を変えて残っていくのですね。

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岡本太郎といえば、油彩画や、レリーフ、立体作品など幅広い分野の作品を残しています。今回の展示でも、油彩画やレリーフの作品も展示されていました。昔の手法と、今の手法を比べてみると、どんなに新しい技術を使ってみても、「本質的には岡本太郎はやっぱり岡本太郎」との印象を受けたので、少々驚きました。

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「油絵とか、彫刻とか、表現の手法そのものが問題なのではない」、それ見たことか、といわんばかりの口調の、岡本太郎の声が聞こえてきそうです。今、もしも岡本太郎が生きていたなら、3次元コンピュータグラフィックスだの、プロジェクションマッピングにも、果敢に挑戦していたのかもしれません。ただし、どんなに新しい技法を使ったとしても、「あっ、これは岡本太郎の作品だ」と、すぐにわかってしまうんだろうなと、今回のメディアアート展を拝見して、そんなことを想像してしまいました。

THE ドラえもん展 TOKYO 2017に行ってきました

土曜日, 11月 25th, 2017

THE ドラえもん展 TOKYO 2017を見に、六本木ヒルズ 森アーツセンターギャラリーに行ってきました。

この企画展は、「ドラえもん」をモチーフにして制作した、現在活躍中のいろいろな作家の作品を展示していました。一部の作品を除いては、写真撮影可とのことでした。いくつかの作品を紹介します。

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村上隆さんのドラえもん

ドラえもんやのびたくんたちが、タケコプターで空を飛んでいます。よく見ると、地面には村上隆さんの作品に良く出てくるお花のキャラクターが描かれています。あまりにも違和感がないので、うっかり通り過ぎてしまいそうです。

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福田美蘭さんのドラえもん

レンブラントの自画像の背景の壁にドラえもんが描かれています。お得意の名作絵画のパロディ版のようです。気難しそうなレンブラントと、舌をだしたドラえもんの表情が対照的で、和感のある組み合わせです。もっとも、この展覧会自体、ある種のパロディなのかもしれませんが…。

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会田誠さんのドラえもん

よくみると湯気が人の形になって、シャワーを浴びているようですが…

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山口晃さんのドラえもん

漫画風にコマわりをした作品です。のびた君が「ぼくいつか死ぬの?」とドラえもんに聞いています。背景が水墨画風に描かれています。

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森村泰昌さんのドラえもん

森村泰昌さん自身がドラえもんになりきって、ポケットから何か取り出しているみたいですが、衣装はちょっと変ですね。

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奈良美智さんのドラミちゃん

ドラミちゃんがジャイアンにリボンを取られて泣いているようです。これは下絵で、封筒の裏に描かれているようです。

他にも、撮影禁止ではありましたが、しりあがり寿さんの「劣化防止スプレー」というアニメーション作品など、いろいろな作品がありました。

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ドラえもん展会場出口付近から見た風景

ショップでは、オリジナルの商品に加えて、川崎市の藤子・F・不二夫ミュージアムのグッズも販売されていました。ショップを出たところで、窓の外を見ると、眼下に青山墓地や国立新美術館がよく見えました。

ヨコハマトリエンナーレ-2017-に行ってきました

土曜日, 8月 12th, 2017

ヨコハマトリエンナーレ-2017-を見に横浜美術館に行ってきました。

横浜高速鉄道みなとみらい線のみなとみらい駅で下車、出口からエスカレータで地上の横浜美術館前に出ました。建物の様子がいつもと違い、何か赤いもので飾られているみたいです。


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ヨコハマトリエンナーレ-2017-の会場, 横浜美術館. 外壁を用いたインスタレーションは, AI Weiweiの作品.

近づいて見ると柱に見えたものは救命胴衣がびっしりとぶら下げられており、窓と思しきものは、救命ボートだそうです。現代アートはこんな形で現代という時代を切り取って提示もしているようです。

会場に入ると、いろいろな国からいろいろな作家のたくさんの作品が展示されていました。


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Rob Pruittの作品, オバマのアート

壁一面に赤色と青色の同じサイズの絵がタイルのように敷き詰められていました。遠目にはぼんやりとしているので、何の絵だろうと近づいてみると、一枚一枚が、オバマ元アメリカ大統領を描いたものでした。作家のRob Pruittのさんは、オバマ大統領が在任していた8年間、ほぼ一日一枚のペースで、オバマ大統領の写真を元に、彼の絵を描き続けていたのだそうです。オバマ大統領の8年間を、毎日こんな風に描いていた画家がいたのかと、感心すると同時に、あらためてこうしてながめてみると、オバマは実に絵になる大統領だったことに気がつきました。一方、あのYes we can!の高揚感から8年もの月日が過ぎ、自分自身のこの8年間はどうだったのかと、思わず感慨深く拝見しました。

一人の人間を根気強く描き続けるという意味では、木下晋さんの絵も似ているのかもしれません。


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木下晋さんの作品, 合掌図, 懺悔

らい患者の顔、手、足が、鉛筆だけで描かれています。らいという病気を引き受けて生きている方、そのような方をモチーフとして選ぶ作家の姿勢。いっさいの装飾を排したシンプルな手法。圧倒的な現実感と存在感を感じました。そういえば、木下晋さんは、以前、NHKの日曜美術館でも取り上げられていたことを思いだしました。

同じ事象を毎日毎日観察し続ける、といっても、Oliver Chanarinさんの作品の場合は、ちょっと風変わりです。


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Oliver Chanarin, Wave Directions in the Mediterranean Today

画面に白黒で矢印が描かれており、文字で本日の地中海の波の方向と日付が記されています。矢印がはっきり描かれた日もあれば、ぼんやりと描かれた日もあります。ぼんやりと描かれたほうは、山水画のようにも見えます。シンプルな構成の作品でも、繰り返し繰り返し表現されることで、もしかすると、その中から人を惹きつける何かが生まれることがあるのかもしれないと思いました。

これは、作品ではありませんが、なかなか良い表示です。写真撮影と利用は非営利ならばよいそうです。ちなみにこのブログも非営利です。念のため。


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いろいろな作品が、いろいろな角度から、たくさんの人にシェアされるとよいですね。

郷さくら美術館に行ってきました

土曜日, 4月 2nd, 2016

桜の花が満開になりました。お花見をかねて、郷さくら美術館に行ってきました。

東急東横線の中目黒駅から表通りを離れて目黒川にまでくると、すでにお花見客でごった返していました。人混みをかき分けるようにして、橋を渡ると人通りが急に少なくなり、郷さくら美術館東京の黒い建物が見えてきました。

郷さくら_01

ちょうど、第4回桜花賞展の開催中でした。桜の花をテーマにした日本画のみのコンテストのようです。一辺が1m50cmもあろうかという大きな桜の絵の華やかな競演です。とは言っても、公募展というわけでもなさそうです。

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立尾美寿紀さんの 《白い花影》 は、白い桜の花と、背景の青の対比が鮮やかでした。描かれた桜の花びらの数は、それほど多くはないのですが、ひときわ際立って見えました。背景には稜線に沸き立つ雲、かと思いましたが、よく見ると緑色の葉が隠れています。ただならぬ構成です。

外山寛子さんの《紅月夜》 は、桜の枝が上側から下に伸びており、その背景は鮮やかな赤に塗られています。ピンク色の桜の花は、まるで金色の雲にからみついているようです。やはり金色の三日月が、下から桜の花を見上げています。京都の祇園の桜をモチーフにしたそうですが、なぜだか、フラメンコダンサーが口にくわえた深紅のバラの花の色を連想しました。そういえば、サクラもバラ科の植物なんでしたね。

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田村美智子さんの《要害桜》は、広島県の名木をモチーフにしたそうです。力強い幹から真横に枝が伸び、荒い筆致で桜の花が描かれています。春にもなれば花もつけるが、華やかさに目をうばわれ、浮かれてばかりいるのもいかがなものか、と老木に語りかけられているようにも感じました。

本地裕輔さんの《春の路》は、満開を過ぎて、散り始めた桜の花の下の流れを小さな舟が遠ざかっていきます。小舟には親元を遠く離れてこれから奉公に出ようとしている少女が乗っているのでしょうか、あるいはすでに西方浄土に旅立って行った人たちの面影が見えているのでしょうか。桜の花の季節は、また、出会いと別れの季節でもあることを思い出しました。

同じ桜の花をモチーフにして、これだけいろいろな描かれ方をしていることに感心しました。桜の花を歌った歌にもいろいろあるように、桜の花を描いた絵にもいろいろあるようです。

郷さくら_03

帰り道に、目黒川にかかる橋を渡ってから、もう一度建物を振り返ってみました。相変わらず、目黒川に沿って多くの花見客が切れ目なく行き交っていました。これほどたくさんの人達が時を同じくして桜の季節を楽しんでいますが、それぞれの人には、それぞれの桜の花が見えているのかもしれないな、と思いました。

来場者の人気投票(複数作品選択可)をやっていました。1階と2階の間の階段の踊り場にあるミュージアムショップで、図録が720円で買えます。ぐるっとパスで入場できます。