Archive for the ‘個人美術館’ Category

戸嶋靖昌記念館に行ってきました

火曜日, 7月 25th, 2017

戸嶋靖昌記念館に行ってきました。事前の電話予約が必要とのことでしたが、家を出る直前の予約(到着の約1時間半前)でも受け付けていただきました。

地下鉄半蔵門線の半蔵門駅の4番出口から、歩いて3分ほど、ダイヤモンドホテルの隣のバイオテックという会社の建物の前に戸嶋靖昌記念館の案内を見つけました。


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戸嶋靖昌記念館の入口. バイオテックという会社の建物の中にあるようです.


入り口を入ると、正面に受付と、左手には本や絵葉書を販売しているコーナーがありました。入場料のことをお聞きすると無料とのことで、びっくりしてしまいました。個人の美術館とはいえ、入場料が無料というのは初めてです。受付の方が学芸員の方を呼びだしてくださり、学芸員の方がわざわざエレベータで展示室まで案内してくださいました。エレベータを降りるとフロア全体が展示室となっているようです。到着したときは、まだ他のお客さんは誰もいませんでした。学芸員の方が、展示内容について簡単に説明をしてくださいました。

戸嶋靖昌のことを知ったのは、今年1月、NHKの日曜美術館でグラナダ 魂の画譜 戸嶋靖昌(としまやすまさ)孤高のリアリズムという番組を見たときでした。それ以来、ずっと気になってはいたのですが、今回、ふと思い出して調べてみると、NHKのでかけよう日美旅第35回 スペイン・グラナダへ 戸嶋靖昌を探す旅のサイトで、この戸嶋靖昌記念館が紹介されているのを見つけました。

NHKの番組でも紹介されていた、戸嶋靖昌がスペインのグラナダに滞在中に描かれた人物画の作品、老女ベルタや、アルバイシンの男-ミゲールの像-も展示されていました。戸嶋の人物画は、まるで古びたシミだらけの壁から、人物の顔が浮かび上がってくるように描かれています。絵の中の人物は、こちらを見つめているようでもあり、全く何も見ていないようでもあり、笑っているようでもあり、不機嫌そうでもあります。表面的な解釈を、断固拒んでいるかのようでもあり、一方では、何かをやさしく語りかけられているようにも感じられます。

番組によると、ミゲールというのは、酒場に入り浸っていたような人物だったそうですが、戸嶋はこのモデルについて、ミゲールは、実に奥底に無欲のエレガンスをもっていると述べていたとのこと。エレガンスというのは見た目を形容しているのではなく、生き方を形容していたようです。そしてモデルのエレガントな生き方そのものを画面に再現しようとしていたようです。

画面には、モデルの生き方が表現されている一方で、画家自身の生き方も現れているようにも感じられました。モデルとなる人物が違っても、基本となるモチーフは変わらないようにも見えたからです。

展示室には、戸嶋が若いころに描いた作品も多く展示されていました。武蔵野の林を描いた油彩画や、裸婦を描いた作品などです。若いころの作品にも、晩年の作品に通じるような独特なタッチが、随所に見受けられるように思いました。

帰り際に、学芸員の方から、戸嶋靖昌の晩年、グラナダから日本に戻ってきた後の、この記念館の館長との出会いと、その後の交流についても教えていただきました。そもそものきっかけは、月刊の美術雑誌に載っていた戸嶋の作品の写真を見て、衝撃を受けられたとのこと。それから戸嶋に肖像画の制作を依頼されたのだそうです。お話しを伺ううちに、この戸嶋靖昌記念館自体が、一つのコラボ作品として製作されたのかもしれない、と思えてきました。しかも、かなりエレガントなコラボレーション作品といえそうです。思わず、このコラボ作品が、現代社会に波紋のように静かに、しかもエレガントに広がることを、願わずにはいられませんでした。

平賀敬美術館に行ってきました

火曜日, 3月 22nd, 2016

平賀敬美術館に行ってきました。箱根登山鉄道の箱根湯本駅から歩いて10分くらい。橋を渡ったところにある有名なお蕎麦屋さんはつ花や老舗旅館の萬翠楼福住や吉池旅館などがある方角です。

平賀敬美術館_01

表通りの喧噪を離れて小道を入っていくと、右手に現れた古い木造の建物に、小さな看板がかかっていました。この看板がなければ、ここが美術館とは気が付かなかったことでしょう。玄関の引き戸を開けると、正面にいかにも怪しげな絵と、湯飲み茶わんを抱えた奥様に出迎えていただきました。

平賀敬美術館_03

入り口ではほぼ半強制的に記名をして入館料を払うと、作品が所狭しと飾られている廊下を通って居間に通され、奥様みずからお饅頭とお茶でもてなしていただきました。居間にあるテレビには昔のNHKの番組のビデオが流れており、山根基世アナウンサーが平賀敬さんにインタビューをしていました。このビデオは、お茶を飲みながらぼんやり見ていてはいけないようです。後で、ちゃんと見ていたのか、話を聞いていたのか、奥様にチェックされてしまいました。

平賀敬美術館_02

廊下には一枚、他の絵とは異なる雰囲気の絵があり、なんとなく気になりました。奥様にお尋ねすると、20歳のころに描いたものだそうです。当時、平賀敬さんは立教大学の経済学部で学んでいたそうですが、松本峻介が大好きだったそうで、その影響を強く受けていたそうです(ご本人のエッセイ)。確か、松本峻介が戦争中に描いた街の絵には、何か意味ありげな大八車が繰り返し出てきたような記憶がよみがえりました(世田谷美術館、松本峻介展)。戦争の逆境の中で絵を描き続けた松本峻介の姿を、そのときの自分の境遇に重ね合わせていたのかもしれませんね。

平賀敬美術館_04

屋敷の奥まったところにある蔵の中もギャラリーになっていて、なんとも怪しげな絵が並んでいました。居間で拝見したビデオによれば、その一枚は横山大観に敬意を表したものなのだそうです。「敬意を表したものなのですか?」 山根アナウンサーが思わず念を押した気持ちがなんとなくわかるような気がしました。

若いときの松本峻介風の画風が、その後どうして、こんなにまで変化してしまったのでしょうか? 本当に不思議です。あれもこれも、何もかもが不思議不思議の平賀敬美術館でした。

なお、平賀敬美術館では、別料金ですが温泉(100%源泉かけ流し)に入ることもできるそうです。これも不思議ですね。