Archive for the ‘公募展’ Category

第23回岡本太郎現代芸術賞展に行ってきました。

日曜日, 3月 1st, 2020

川崎市岡本太郎美術館で開催中の第23回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展に行ってきました。時はおりしも、新型コロナウィルスの感染者が国内外で毎日のように拡大中。行こうか、行くまいか、さんざん迷ったのですが、この時期、やっぱりこれを見逃すわけにはいきません。で、行ってみると美術館の受付の方、監視員の方、皆さんがマスクを着用されていました。厳重警戒の中でのTARO賞展です。

岡本太郎美術館前、階段下のポスター

作品を一通り見ていたところ、偶然、岡本太郎さんご本人とばったり会いました。「今年も来ましたよ。」「よく来たな」という声が聞こえたような。いやいや、よく見ると、これは立体作品です。どこかでお目にかかったような。そういえば、昨年の、神奈川県美術展でもお会いしましたね。

村上力さん、「一品洞『 美術の力』」

昨年のTARO賞でも、段ボールを素材にした作品に妙に感心したりしたのですが、今年も段ボール製の作品がありました。彩色してあるのでわかりにくいのですが、段ボールにアクリル絵の具で色をつけているそうです。最近、アマゾンで買い物をするようになってから、以前よりも段ボールが身近に感じられるようになってきました。アマゾンだから南米風なのか、あるいはポリネシア風なのか。

本濃研太さん、「僕のDNAが知っている」

素材といえば、こちらは建築現場の足場に使うような鉄パイプに、木材、それと断熱材を組み合わせて作った立体作品です。モチーフは青木繁の「海の幸」のようです。 力強い感じはするのですが、神話から題材をとったという神々しさというよりも、あるいは獲物を捕らえた高揚感というよりも、 何故だか痛々しい感じがして、確かに青木繁の絵画作品となにがしかの共通点があるかもしれません。段ボールとは一味違った素材のリアリティを感じてしまいました。

丸山喬平さん、「幸について」

暗室に入ると、中央にはミロのビーナスの表面に蛍光で光る紐が貼られている作品が置いてありました(暗かったせいか、写真はピンボケになってしまいました)。コンピュータの中で三次元の立体をモデリングするのに、ワイヤーフレームという方法があるようです。この作品では実物の三次元立体作品を作っておいて、それをわざわざ手間ひまかけて、コンピュータの中の3次元作品のように見せかけているのです。一体何のため? コンピュータの場合、マウスをクリクリするといろいろな角度から立体を見ることができます。もちろんこの作品でも、作品のまわりをぐるりと回ると、いろいろな角度で作品をみることができます。良くできていますね。当たり前といえば当たり前なのですが。たぶんコンピュータの場合、能力には限界があるために、情報量を間引いているのだと思います。ひもの裏表をねじって貼るとメビウスの輪というものができますが、これは二次元、これは三次元と分類して、安心してなどいられないようになっている。それにしても、アーティストにはアーティストなりのやり方(DNA)があるようです。

森貴之さん、「View Tracing」

こちらはとても良くできた木彫の作品です。人物はバーチャルリアリティー用のメガネをかけていて、両手にもったコントローラで、何かを操っているらしいのですが、観客にはこの人が一体何を見ているのか、何を操ろうしているのか、まったくわからない。ただ、首の角度や手や足の動きから想像するのみ。この作品でも、仮想世界と現実世界が、メビウスの輪状態になっているようです。

村田勇気さん、「任意のアトリビュート」

こちらは、テーブルの上に無数のコインが積まれている、という作品です。コインは一見すると一円玉に見えますが、大きさはちょっと大きくて500円玉程度。表面には「日本国一円」とあるべきところが「日本国一丸」と書かれていて、発行年号のところが「一九八四+三十六年」と書かれています。2020年の東京オリンピックを国民一丸となって成功させよう、という意味と、ジョージオーウェルの未来を予言したといわれる作品「1984」がかけてあるらしいのです。

高島亮三さん、「1984+36」

この作品が作られていたころ、恐らくまだ新型コロナウィルスの問題などはなかったころかと思われますが、今となってみると、いつの間にか、予定通り東京オリンピックの開催されるのかどうか、危ぶむ声もちらほら聞こえてきます。この難局を乗り越えるためには、文字通り「日本国一丸」になる必要があるようなのですが、「一丸」の意味が少々変わってきているようでもあります。この作品のように皆がピッタリくっついてしまったままでは、濃厚接触者になって感染が一気に拡大しかねません。一人一枚は持って行っても良いとのことでしたので、一枚だけ引き離して、微力ではありますが、感染リスクの低減(オリンピックの開催)に貢献させていただきました。

第55回神奈川県美術展に行ってきました

月曜日, 9月 16th, 2019

第55回神奈川県美術展を見に、神奈川県民ホールギャラリーに行ってきました。会場の入り口では、ピカソと岡本太郎、二人の巨匠が両手を広げて、笑顔で出迎えてくれました。

PICASSOとTARO 村上勉さん

そういえば、岡本太郎は神奈川県にゆかりがあり、川崎市生田緑地の岡本太郎美術館では、毎年TARO賞が開催されています。TARO賞展ほどではありませんが、 神奈川県美術展にも、なかなか岡本太郎の精神が感じられるような気がします。少なくとも、美しい風景画や、上品な静物画、きれいな美人画といった作品は、ほとんど選ばれていないようです。

岡本太郎美術館といえば、横山芙実さんの作品も入選していました。

楽土を望みて 横山芙実さん

以前、横山さんご本人とお話する機会があり「どうして茶色を多く使われているのですか?」とお聞きしたところ、「茶色の岩絵の具が一番安いからです」と明快なお答えをいただきました。岡本太郎というよりも、棟方志功を連想させる作風なのですが、エネルギーは岡本太郎にも棟方志功にも引けを取らないような感じがします。まだお若いのに、迷いが感じられない絵でお見事です。

単色でエネルギッシュな作品と言えば、今年も磯野悦郎さんの作品が入選していました。

311 鎮魂歌 磯野悦郎さん

今年のかわさき市民アンデパンダン展では、磯野さんにしては珍しく中途半端に色を使われていたので違和感を覚えたのですが、やはり磯野さんの作品は、黒一色のほうがインパクトが強く感じられるようです。東北の震災関連の作品が、次第に少なくなってきているようですが、天災は忘れたころにやってくる、ということわざもあるので、気をつけたいと思いました。

駅をモチーフにした作品も気になりました。JR南武線の平間駅の改札口の向かいにはコンビニエンスストアがあって、確か、店の前には椅子が3-4脚おいてあります。夜明け前の寒い朝、始発のバスを待つ間、椅子に座ってホットコーヒーを飲んだことを思い出しました。

街灯り 秋山遥夏さん
オリジナルの小田急線の改札口 藤田淳子さん

オリジナルの小田急線の改札口とのことですが、この雰囲気は本線ではなくて多摩線ではないかなと想像しました。駅の改札口には、いつも人が行きかっているのを見慣れているだけに、人が一人もいない改札口の風景、というだけで、なぜだか新鮮な感じがすることに少々驚きを感じました。

今年は、すこしゆるい感じのする作品も目につきました。モデルのお爺さんが出来上がった絵をみて、「私以外雀じゃないの」とつぶやいた様子を想像して、思わず吹き出しそうになりました。一羽一羽の雀のしぐさも豊かです。

私以外雀じゃないの 河村拓海さん
春の記憶 伊藤ちさとさん

この絵のゆるさ加減も中途半端ではありません。どこまでゆるくしても絵画として成り立つのか、挑戦しているのでしょうか? 大きな画面に、淡い色の花々がゆったり描かれています。しかも、周りを赤い枠で囲んでいて、ふんわりとした中に一応のまとまりが感じられました。

Connection 2019

なぜだか、仮装した人たちが、綱引きをしている最中のようなのです。一番左の人の足が、画面からはみ出しています。しかも勝負は、この人のつま先にかかっているようなのです。最初からはみ出すつもりで描いたのか、描いている途中からはみ出さざるを得なくなったのか、興味は尽きないところです。

今年のTARO賞を見てからというもの、段ボールの作品が妙に気になるようになりました。さて、この段ボールには元々何が入っていたのだろうか? ペットボトルの水ではなかろうか? いやいやAmazonの箱ではなかろうか? などと考えつつ見るのは邪念でしょうか?

邪念ハ無心ヲ所望スル LUNA..CLIP..さん

段ボールほどではないにしても、この作品にも材料費はあまりかかっていないようです。そういえば、神奈川県は、箱根町の寄せ木細工も有名ですね。

DREAMS -ここからきた- 西村卓さん

小さな部品を組み合わせて、ひとまとまりの巨大なシステムを作り上げるのが、現代のトレンドなのかもしれません。でもよく見ると、つぎはぎだらけ、だったりすることが、よくあるんですよね。

第22回TARO賞展に行ってきました

日曜日, 2月 17th, 2019

第22回TARO賞展、正式には「岡本太郎現代芸術賞展」というのだそうですが、を見に、川崎市岡本太郎美術館に行ってきました。毎年、「何だこれは!!」の精神にあふれた作品を数多く拝見してきましたので、今年はどんな作品に出合えるのか楽しみです。

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展示会場の入口

展示会場に入ると、目の前に大きな金貨が現れました。

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赤穂進さん「金貨の肖像」(表面)

アートはお金にならない、とはよく言われますが、それならアートでお金を作ればよい、と考えられたのかどうかはわかりませんが、立派な堂々とした金貨です。描かれているのはマルクスなのだそうです。横に回ってみると、側面にもちゃんとギザギザがついている。もしこれが本物の金貨なら、一億円くらい、あるいはもっとするのでしょうか?

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赤穂進さん「金貨の肖像」(裏面)

裏に回ってみると、この通りでした。円形の枠にキャンバスを張るところや、固定の仕方など、いろいろと苦心された跡が伝わってきて、別の意味で感動ものです。

こちらでは、直接お金の展示というわけではありませんでしたが、その代わり「賽銭」と書かれた板や石がたくさん展示されていました。

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大槌秀樹さん「名もなき神々」

素材は、廃村となった集落の神社周辺などから集めてきた板や石などのようです。横の壁には、ご自身が上半身裸になって、山の中で見つけた作品の素材を手にしているらしい写真が展示されていました。

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大槌秀樹さん「名もなき神々」(側面)

タイトルの「名もなき神々」というのは、もしかしたら、ご自身も含めた「名もなきアーティスト達」を指す比喩なのかもしれません。名もなきアーティスト達に、もっとお賽銭をくださいな、という意味なのかな?

お金がなくてもアートはできる、という心意気を示すような作品もありました。捨てられていた段ボール紙で、仏様と十二神将の像を作られた、二重の意味で、お見事な作品です。

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本堀雄二さん「捨てる紙あれば、拾う神あり」

展示が終わったら、また段ボールとしてリサイクルできる、という究極的にエコな作品です。お見事。

こちらの作品も素材には、極力お金をかけていなさそうな、サンドペーパーの表面に、小石を使って絵描かれた作品です。作品の手前には、実際に制作に使ったという小石も展示されていました。

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藤原史江さん「森羅万象」(左)と小石(右)

そういえば大昔の人々は、洞窟の岩壁に、こんな風にして絵を描いていたのかなあ、と思いました。サンドペーパーも材料は紙と砂ですから、環境にはやさしそうです。

一方、アーティストにもお金が必要なときもあって、そんなときには社畜のようにして働くこともあるようです。イガわさんは、社畜のように働いているときに、選挙があって、とても選挙のことまでは考えられない、でも選挙にはいかなくちゃならない、という状況の中で、この作品のアイデアが浮かんだそうです。

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イガわ淑惠さん「民主主義キョウセイマシーン」

このポスターの裏側には、投票所があって、作者のイガわさんから投票の仕方をていねいに教えていただきました。歩きながら、次々にスクリーンに表示される質問に対して、短い時間のうちに「賛成」「反対」どちらかに丸をつけなければならない、という体験型の作品です。もたもたしていたら、回答を記入する前に、横からどんどん投票用紙を取られてしまいました。歩きながらだととても考えられないでしょ、ややこしい質問に対して「賛成」「反対」の二者択一などではとても答えられないでしょ、という選挙制度の抱える矛盾を、身をもって体験させていただきました。ちなみに、このややこしい機械の制作にはご主人が協力してくださったそうです。

FACE展2018に行ってきました

日曜日, 3月 25th, 2018

FACE展2018を見に、損保ジャパン日本興亜美術館に行ってきました。あいにく、天気は雪混じりの雨だったので、新宿駅からできるだけ地下を通り、損保ジャパンのビルの少し手前の交差点で地上にでました。

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 展示会場の入口にて

展示会場に入ると正面に、今年のグランプリ作品が展示されていました。

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 仙石裕美さん、「それが来るたびに跳ぶ 降り立つ地面は跳ぶ前のそれては異なっている」(グランプリ)

裸足の女性が大縄跳びを跳んでます。ミケランジェロ風のたくましい脚ですが、顔は見えません。縄ははるかに長いのに、跳んでいるのは一人だけのようです。はたして、とんな顔で跳んでいるのか興味がわきます。タイトルから想像するに、「とにかく、縄が来たんだから、跳ぶしかないでしょ、理屈じゃないのよ」という状況のようです。赤い色が生きるエネルギーを強調しているようです。古今、女性像は絵画のモチーフですが、現代絵画では、女性もたくましく描かれるようです。

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 阿部操さん、「The beautiful day」(優秀賞)

一転してこちらでは、とても淡い色彩で、ごく自然体の静かなポーズで女性が二人描かれています。夏でしょうか、半そでにサンダル履き。背景は海と砂浜のようです。陽ざしは強そうですが、陰影は、ほとんど感じられない。目もはっきりと見開いていて、まぶしい様子もありません。油彩ですが、伝統的な西洋絵画の手法でもないようですし、かといって、日本絵画でもない、独特な表現のようです。阿部さんは、昨年、一昨年と、一人の女性を描いて入選されていますが、今年は二人描いて「優秀賞」。もし、三人描いていたら、果たしてどうなっていたのでしょうか?

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 佐藤凱さん、「網」(審査員特別賞)

こちらの女性は、輪郭も色も、くっきりと描かれています。毛糸の網目も細かくていねいに描かれています。よく見ると、女性の背景に、一羽のすずめのような鳥が描かれています。鳥は、かすみ網のような網を破って、今まさに、飛び出したところのようです。女性の顔やポーズからは、「私だってやればできるのよ…」といっているような、自信が感じられます。

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 赤枝真一さん、「ほんとは優しい子」

この作品は、キャンバスの形が四角ではありません。絵に合わせた形に切り取られた板にキャンバスの布が貼られているのかもしれません。タイトルからの想像ですが、本当は優しい子なんだけど、今は一時的にご機嫌が斜め、ということのようです。背景にはピンク色の、妙に高い顔の高さまであるブロック塀が描かれていて、足元には枯れ葉が降り積もっています。一見穏やかに見えながらも、実はしっかりと閉じ込められていて、そう簡単には身動きできないような、それでいて、このままではいずれ埋もれてしまうような、現代の若者が感じている社会へのいらだちを暗示しているのかもしれません。

FACE展は、他の公募展と比べて、女性をモチーフにした作品が少ないように思いますが、入選作品、入賞作品の女性像を拝見すると、単に絵として質が高いというだけではない、なにがしか、それぞれ、ただならぬ気配を醸し出しているようです。

第51回かわさき市美術展

木曜日, 3月 8th, 2018

かわさき市美術展を見に、川崎市市民ミュージアムに行ってきました。JR南武線の武蔵小杉の駅前から、市民ミュージアム行きのバスに乗ったのですが、いつもよりも、ずいぶん乗客が多い感じです。

2018_Kawasaki_Shibiten_01 川崎市市民ミュージアムの入り口看板

おやっ、「みうらじゅんフェス!」と「かわさき市美術展」が同時開催中でした。そのせいか、いつもの市民ミュージアムとは様子が違うようでした。とにかく、びっくりするほど、人がたくさんいます。

2018_Kawasaki_Shibiten_02 ミュージアムショップ

ミュージアムショップ(みうらじゅん風に言えば「いやげもの売り場?」)も昨年と比べて大賑わい。みうらじゅん関係はもちろん、それ以外の商品も、店員さんの数も増えています。ともあれ、市民ミュージアムに活気が戻ってきたのはうれしいことです。

「みうらじゅんフェス!」のにぎわいから、ちょっと離れて、「かわさき市美術展」の会場へ向かいました。円形の広場をはさんで、反対側の展示室です。昨年と比べて、「かわさき市美術展」のポスターや看板のデザインが一新され、色とりどりとなって、楽しい感じになりました。今年はどんな作品に会えるか楽しみです。

2018_Kawasaki_Shibiten_03 千葉純子さん「日常」

さつまいもがたくさん描かれています。収穫したばかりでしょうか? まだ根もついているようです。千葉さんは、いつも農産物に関係する絵を出展されているようです。川崎市というと工業都市のイメージが強いのですが、千葉さんの絵を拝見すると、ちょっと気持ちが温かくなるような気がします。

2018_Kawasaki_Shibiten_04 宇田さよさん、「気」

これはお地蔵さまでしょうか? みんなで、お花見をしているようす。なんだかとても楽しそうです。そういえばもうすぐ、お花見のシーズンですね。

2018_Kawasaki_Shibiten_05 ベルトン・ジェイミーさん、「楽しい方の道」

お姉さんと弟くんでしょうか? はだしで凸凹のクッションの上を歩いています。おとなにとっては、なんでわざわざそんな所を、と思うのですが、子供達にとっては、本当に、こっちの方がよほど楽しい道のようです。

2018_Kawasaki_Shibiten_06 土田匠実さん、「静まり返った、そんな夜は…」

土田さんは、美術大学を卒業してまだ1年とのこと、生田緑地のそばに住んでおられるそうです。森の中の夜遅くには、昼間とは違う何かの気配を感じます。もしかすると、こんな生き物が出没しているのかな???

2018_Kawasaki_Shibiten_07 永井武志さん、「自画像」

強い意志を感じました。2年前の「僕のおぱあちゃん」も良かったですが、今回は、より頼もしい感じの絵になっているようです。

さすが、150万都市の川崎市で最も歴史のある公募展だけあって、皆さん、力作ぞろいです。いろいろな世代の方々が、今という時代をいっしょに生きていることを感じることができるのは、貴重な展覧会だと思います。ただ、同時開催の「みうらじゅんフェス!」と比べると、お客さんの入りは、今一つ。協賛してくださる会社がたったの2つだけというのも、少々寂しい気がしました。もっと川崎市にも、市民のアートを応援してくださる企業があっても良いような気がしますが…。

シェル美術賞展2017に行ってきました

月曜日, 12月 25th, 2017

シェル美術賞展2017」を見に、国立新美術館に行ってきました。

今回は、同時開催されている主要な企画展がなかったためか、全体的に人が少ない感じで、その分ホールが広く感じられました。一階の奥の1B展示室で「シェル美術賞」の看板を見つけました。
いずれも力作ぞろいでしたが、中でも気になった作品をいくつかご紹介します。

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シェル美術賞展2017の入口

加賀谷真秀さんの「rhythm」という作品は、4人の子供が楽しげにドラムをたたいています。軽やかな音が聞こえてきそうです。タイトルの「リズム」から、ホドラーの「良きリズム」を連想していまいましたが、ホドラーよりも、明るい色彩と軽いタッチです。

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加賀谷真秀さん”rhythm”

松本宙さん「都市の綻び、記憶の綻び」の画面の中央に川が流れていて、その向こうに古い家並みや工場が描かれています。果たして、いつの時代の何処を描いたものなのか、気になりました。戦争中に描かれたという松本竣介の「Y市の橋」を連想しました。雰囲気が似ているようにも思いますが、時代がずいぶん違うようです。

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松本宙さん「都市の綻び、記憶の綻び」

竹内優文さん「浴場」は、昔の銭湯の洗い場がリアルに描かれています。それにしても、あちらこちらが痛んでいるところまでリアルです。蛇口もそれぞれ違う形。それでも、昔は、多くの人が訪れて、毎日の疲れをいやしていた様子が妙に偲ばれて、不思議な感じです。

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竹内優文さん、「浴場」

YASUKA.Mさんの「金環日食」は、鉄板の錆びで描いたものだそうです。そもそも鉄錆びで絵を描こうという発想にびっくり、鉄錆びと金環日食という取り合わせも不思議ですが、どんな素材を使ってでも、アート作品にしてしまう力量に感服しました。

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YASUKA.Mさん、「金環日食」

杉浦彰彦さんの「現実」は、おじいさんが椅子に座って、こちらをにらみつけています。足は白く抜けているし、手は赤い線でかたどられているし、顔半分も赤くなっていて、画面のところどころ絵の具は垂れています。それでも、妙に存在感があり、こちらの心の奥まで見透かされているようです。どこかで見た顔だなと思ったら、白隠のだるまに似ているようです。

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杉浦彰彦さん、「現実」

YUMIさんの「build」は、画面の大半が大胆にも、四角い形状に同じ色で塗られています。わずかに塗り残された領域から、下塗りの色がのぞいています。最小限の少ない色数と、単純に見える画面構成から、三次元的な空間の広がりと、地層のような時間の積み重ねが、じんわりと、しかもゆったりと、感じられるようです。そういえば、昨年のちょうど今ごろ、JINEN Galleryで開かれたYUMIさんの個展に伺ったことを想い出しました。

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YUMIさん、「build」

FACE展2017に行ってきました

土曜日, 3月 4th, 2017

FACE展2017を見に、損保ジャパン日本興亜美術館に行ってきました。

新宿駅西口から歩道橋の上をてくてくと歩いて、損保ジャパンの高層ビル前の交差点に出ました。交差点を渡ると、FACE展2017の案内板が見えてきました。

FACE2017_01 FACE展2017の案内

美術館の入口にある無料のコインロッカーに荷物を預けて、エレベータで高層階にある展示室に向かいました。展示室内での作品撮影は可能で、撮影した作品写真は、非営利目的ならば使っても良いとのこと、勝手ながら使わせていただきます。

今年は、902点の作品が出品されて、そのうちの71点が入選したそうです(倍率12.7倍)。狭き門をくぐり抜けて入選された、力作の数々を拝見しました。

FACE2017_02  SENNAさん、Dance for Moon

足や手の残像が残っていて、女性が夢中で踊っている動きが伝わってました。ちょっと現代のドガと呼ばれているロバート・ハインデルのダンサーの絵を彷彿とさせます。合わせて周りの蝶々も、ひらひらと舞っています。

FACE2017_03 馬場俊光さん、緑の風景-22

蛇行する川と田園風景が緑一色で描かれています。川の水面のくっきりとした白さと遠くかすんだ山の対比が印象的。なぜか、どこかで見たことがあるような懐かしさを感じました。風景画だけど心象風景。

FACE2017_04 吉岡千尋さん、SUB ROSA

ベランダに置かれたバラの鉢でしょうか? 初夏の日差しの強さと、空気の透明感を感じました。

FACE2017_05 宮木沙知子さん、上へ下へ

おや、この絵はどこかで見たような? 宮木さんには、昨年9月にアートコンプレックスセンターで開催された、Fad Fair 2016の会場でお目にかかっていました。アクリル絵の具がたらりたらりと上に行ったり、下に行ったり。入選おめでとうございます。

FACE2017_06s 阿部操さん、見つめている

おや、この絵もどこかで見たような? 阿部さんにも、昨年5月の「阿部操展」の会場で、ご本人にお会いしました。連続の入選おめでとうございます。絵のタイトルは「見つめている」。はたして、何を見つめているのでしょうか?

ミュージアムショップで入選作品全点が掲載されている図録(1000円)を購入しました。作家の皆さんの略歴も興味深い。

第20回岡本太郎現代芸術賞展に行ってきました

日曜日, 2月 12th, 2017

第20回岡本太郎現代芸術賞展を見に、川崎市岡本太郎美術館に行ってきました。

小田急線の向ヶ丘遊園駅の南口の改札を出て、駅前のロータリーから続く道をまっすぐ歩いてゆくと生田緑地の入口に着きました。生田緑地の中を、右手に日本民家園、左手に宙と緑の科学館を見ながら、さらに緑地の奥に進みます。ちょっと神聖な感じのする森を抜けると、岡本太郎美術館の入口に続く階段が見えてきました。

Taro_2017_01s 美術館入口のポスター

岡本太郎美術館の常設展「みんなが見たい!太郎セレクション 2017」展をすぎると、いよいよ太郎賞の展示会場です。展示会場の入り口には、写真撮影可ブログへの掲載も可、との表示がありました。

展示会場に入ると、左との壁に展示されている、大きな絵が飛び込んできました。レオナルド・ダ・ピンチの最後の晩餐を連想させる構図です。とはいっても、登場人物は全員女性。着ているものも髪の毛の色も、かなり派手。テーブルの上に横たわっている人までいる。絵の手前には、実際にテーブルが置かれており、いろいろなものがにぎやかに並んでいます。ちょっと平賀敬の作品を連想しました。

Taro_2017_02s あべゆかさん, BE GOD. 300x500x500cm, キャンバスに油彩他.

こちらも元気な女性がモチーフ。自転車に乗ったお姉さんと、ローラースケートに乗ったお姉さんのようです。よく見ると、細部には山水画のモチーフも各所にちりばめられており、近くで見ても楽しめます。おねえ山水シリーズのようです。

Taro_2017_03as 奥村彰一さん, おてんば納涼図, 200 x369 x4 cm, ポリエステル画布, 墨, 岩絵の具.

Taro_2017_03bs 部分

こちらは、何か、異国情緒を醸し出したお店のようです。店先には雑多なあやしげな商品が並べられています。よく見ると、一つ一つが焼き物でできている。碁石までが、一つ一つ焼き物でした。無用の用を表しているようです。

Taro_2017_04as 福本歩さん, タオ・マーケット, 300 x500 x 150 cm, 陶, 木, 他.
Taro_2017_04bs 碁石も焼き物

こちらには、大きな牛の絵。と、思ったら、これは版画でした。横幅が2m以上、本物の牛と同じくらいの大きさかもしれません。迫力があります。こんなに大きな版画を制作するのは、さぞかし大変だったでしょう。細部を見ても、一本一本の線が細かく彫られていたので、感心しました。

Taro_2017_06as 冨田美穂さん, 388全身図II, 156 x233 x3 cm, 木版画, 和紙.
Taro_2017_06bs  牛の頭部

こちらは、古びた屋根の瓦に、一枚一枚人の顔が描かれています。瓦は一部欠けているものもあります。描かれているのは、全員、若い米軍兵士のようです。新聞記事によると、戦後の占領軍の兵士を描いたものが70年ぶりに見つかったもの、のようですが、本当かな??

Taro_2017_05as ユアサエボシさん, CHQ PORTRAITS, 323 x442 x4.5 cm, 水性塗料・瓦
Taro_2017_05bs 部分. 女性兵士もいるようです.
Taro_2017_05cs 新聞記事??ほんとうかな??

ここでご紹介させていただいたのは、比較的おとなしいものばかり。岡本太郎の何だこれは?の精神と、爆発するようなエネルギーが、生田の森の奥に、まだまだ元気に息づいているようでした。

なお、全入選作品(26作品)の写真入りのパンフレットが配布されていました。

佐藤太清賞公募美術展に行ってきました

日曜日, 1月 29th, 2017

佐藤太清賞公募美術展を見に、横浜の赤レンガ倉庫に行ってきました。

みなとみらい線の日本大通り駅を出て、横浜税関の建物の横を通りすぎ、海沿いの道を行くと、赤レンガ倉庫が見えてきました。

Sato_Taisei_01s 赤レンガ倉庫

赤レンガ倉庫の建物の中に入ると、2階に上がる階段の下に第16回佐藤太清賞公募美術展の案内板を見つけました。佐藤太清賞というのは、京都府の福知山市が主催する、若手を対象にした絵画の公募展だそうです。入賞、入選作品の展覧会は、福知山市、横浜、東京、京都、名古屋と巡回予定です。

透明な床の階段を2階に上がると、いかにも倉庫といった感じの展示会場が広がっていました。受付の方に伺ったところ、作品の写真を撮影しても良いとのことでした。(もっとも、展示されているすべての作品が掲載された図録が、無料で配布されていましたが…)

Sato_Taisei_02s 階段下の案内版

公募展の審査は、日本画の部絵画の部に分かれていて、対象年齢が異なるようです。だいたいですが、日本画の部は27才以下、絵画の部は20才以下に相当するようです。そのためか、日本画の部のほうが、ちょっとだけ技術的には上手な作品が多かったかな、というような気がします。

まずは、日本画の部から気になった作品2点をご紹介します。

Sato_Taisei_03s 松本啓希さん、大鷹

この鷹の絵は、眼の鋭さ、足の爪の鋭さ、広げた羽の力強さから、これから羽ばたこうとする並々ならぬ強い意志を感じる作品でした。

Sato_Taisei_04s 菊地貴子さん、廻る

こちらは、ウミガメが2羽、上向きと下向きにゆったりと泳いでいます。カメといっしょに海中を浮遊しているような感覚を覚えました。

次に、絵画の部からも、気になった作品を2点、ご紹介します。

Sato_Taisei_05s 近藤詩月さん、居場所を求めて

少年の背後の雲が、もくもくと湧きあがり、クジラの形となって現れました。もしかすると、少年の心の中では、大きな志が湧きあがってきたのかもしれません。

Sato_Taisei_06s 清水結衣さん、ふたりぼっち

こちらは、宙を泳ぐクジラが、月に向かって、ふたりぼっちと言っているようです。大きな志をもちつつ、一人、夜空の月に向かって語りかけるのは、長い人生の中でも貴重な時間なのかもしれません。

第50回記念かわさき市美術展に行ってきました

日曜日, 1月 8th, 2017

第50回記念かわさき市美術展を見に、川崎市民ミュージアムに行ってきました。
JR南武線の武蔵中原駅の駅前から、武蔵小杉行のバスに乗って、市民ミュージアム前で下車、森の中の小道を抜けて美術館の入り口に出ました。
美術館の中のホールを抜けて、トンネルのようになっている通路を抜けて、会場の企画展示室2の前に出ました。同時開催は、川崎フロンターレ展。川崎フロンターレのホームスタジアム、等々力陸上競技場も、同じ等々力緑地の中にあります。

Kawasaki_50th_01 美術展の入口

受付で、名前を書けば、展示室内で作品の写真を撮影しても良いそうです。名前を書いて、撮影許可を示す名札をいただきました。

さて、今回は、第50回を記念して、50回記念特別賞が設けられたようです。

Kawasaki_50th_02 黒沢進士さん鬣ドリームアクリル, キャンバス

昨年5月に自由が丘駅前のギャラリーで個展気顔絵展を開催されていた黒沢進士さんが50回記念特別賞を受賞されていました。今回もお得意のライオンですね。いつにも増して、目に力が感じられます。心なしか、顔も自信に満ち溢れていて、いかにも百獣の王ライオンの余裕が出ています。でも、たてがみを良くみると、たくさんの小さいお花が描き込まれていて、いかにも黒沢さんらしい、やさしさが伝わってきました。ライオンが、お花畑の夢を見ているのでしょうか??黒沢さん、おめでとうございます!!

動物の顔、といえば、こちらの作品も迫力がありました。

Kawasaki_50th_03 山崎来さんSPECIES

6種類の動物の、それぞれの真摯なまなざしに、こちらの心を見透かされているようで、思わず、襟を正してしまいました。

うって変わって、心がなごむ風景です。

Kawasaki_50th_05 千葉純子さん夫婦岩絵の具, その他

稲刈りでしょうか? 農作業に励む夫婦を描いているようです。手前の黄金色のグラデーションに思わず引き込まれてしまいました。そういえば、神奈川県美術展で拝見した三崎口という作品の、スイカとカボチャを売っているおばあさんも、ほのぼのして良かったです。

Kawasaki_50th_06 茂木菜菜さんSpace air油彩, キャンバス

白いぶつぶつした表面の惑星の向こうに、はるか宇宙の星々が広がっているようです。構図としては、サン=テグジュペリ作星の王子さまの表紙を思い出しますが、画面としては、左上と右下が欠けている。同じサイズのキャンバスを2枚、段違いにしてい描いているんですね。それにしても、欠けている部分はどうなっているのかな? 思わず好奇心が刺激されてしまいました。

Kawasaki_50th_07 乕谷孝子さん夕色の頃水彩, 和紙

徳利にも見えるし、人にも見える。存在感があって、やすらぎも感じました。和紙に水彩とのこと。優しい色合いですね。

Kawasaki_50th_08 磯野悦郎さん地霊水彩、和紙

磯野さんも神奈川県美術展で地霊KUMAMOTOという作品を拝見しました。確か、和紙にモノタイプという版画の手法で制作されているそうです。平面作品なのに、なぜか立体的に見えるのが面白いですね。同じ手法、同じモチーフが繰り返されるという点で、前の作品との連続性を感じました。地霊というのは、地下の巨大エネルギーを指すのでしょうか? 今年2017年も、地震災害への備えを忘れないようにしたいと思いました。

今回も入選・入賞作品集のPDFをダウンロードできますよ。また、会場では50回記念誌も配布されていました。昭和42年(1962年)から始まったそうで、これは、神奈川県美術展の開始とほぼ同じ時期にあたるそうです。歴代の最優秀作品(ほとんどの作品は、川崎市市民ミュージアム蔵のようです)の写真が掲載されています。