滝本優美展に行ってきました

銀座のコバヤシ画廊で開催中の滝本優美展を見てきました。この個展は、「画廊からの発言 新世代への視点2018」の一環として開催されたものだそうです。

地下鉄銀座駅のA12番出口の階段を上り、松屋銀座の前に出ました。東京でも毎日毎日、最高気温が35℃を越えるような暑さが続いていますが、今日も一段と暑い。暑い中を汗をかきかき歩いて、表通りから二本目の路地を入ったところ、すぐにコバヤシ画廊の看板が見えてきました。

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滝本優美展の看板

階段で地下におりたところが、個展の会場の入り口になっていました。展示会場はさすがに冷房がきいて涼しく、やれやれほっとしました。滝本優美さんが在廊されており、直接お話しを伺うことができました。

滝本さんは、以前”YUMI”という画号を使っておられましたが、今年の4月からは本名の「滝本優美」を用いて、作品を発表されることにしたそうです。大学院を卒業されて、いよいよ作家としての覚悟を決められたのかもしれません。一昨年のJINEN GALLERYでの「YUMI個展」以来、今回で2回目の個展だそうです。

メイン展示会場の壁には、100号スクエアの絵が6枚展示されていました。いずれのモチーフとも、ご自宅付近(大崎)の風景を元にされたとのことです。基本的な手法自体は二年前から変わっていないのだそうです。

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この作品はビルの間に夕陽が沈むところだそうです。太陽の色と形がやわらかく描かれており、都会の一日の穏やかな終わりが感じられます。

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こちらは、夜の風景でしょうか? 柱の向こう側の、暗闇のさらに向こうにかすかな家の光が見えるようです。

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坂道の登り口でしょうか? 坂道の少し登ったところは横道もあるようです。あの坂道の向こうにはどんな景色が待っているのか、思わず歩いて登ってみたくなるような道です。

身近な街の風景の中から、さりげなく切り取られた景色が、思い切り単純化され再構成されて、それでもなお画面に上に、その場の雰囲気を残すだけでなくて、滝本さんの作品に特有な新たな街の風情が醸し出されているように感じられました。元の景色は大崎なのかもしれませんが、エッセンスのみ取り出すことで、誰にとっても身近な街かどの風景に重ね合わせることができそうです。

薬師寺希実・大和春子展に行ってきました

Kurum’art Contemporaryの車さんからご案内のメールをいただき、AAC-ACT ART COM-Art & Design Fair 2018という、アートフェアの「薬師寺希実・大和春子展」に行ってきました。

アートコンプレックスセンター/ACTに行くのは久しぶりなので、迷わずにたどり着けるか、少々心配だったのですが、JR信濃町駅から歩いて行くと、表通りから脇道に入る曲がり角には案内板が出ていたので安心しました。

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 案内板

脇道に曲がってしばらく歩くと、左手に独特な外観の建物が見えてきました。今年も紫陽花がきれいです。

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 会場入り口

会場は地下と二階に分かれていました。地下の会場に降りて、一番奥まで行くとKurum’art Contemporaryのブースがありました。ブースの前で車さんが迎えてくださり、そこで作家の大和さんと薬師寺さんを紹介してくださいました。

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 大和春子さん、June 2018,no.1

大和さんの作品は、白い背景に、緑や赤灰色などで、何かが描かれているようなのですが、何が描かれているのか判然としませんでした。そこで大和さんご本人にモチーフは何かお聞きすると、日常生活の中からモチーフを選んでおられるとのこと。ポートフォリオも見せていただいたのですが、下絵もたくさん描かれているようです。この絵の場合は、通勤電車の窓から見た風景から着想を得た、とのことでした。

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 大和春子さん、June 2018,no.2

説明していただいても、今一つよくわからなかったので、こちらの作品は?とお聞きすると、こちらも通勤電車で見かけた人物をモチーフにされたとのことでした。そういえば、椅子に座って居眠りをしているおじさんに見えるようなみえないような。いつも電車で居眠りばかりしているおじさんとしては、こんな風にみられているのかな、と、ちょっと身につまされます。

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 薬師寺希実さん、獲物

こちらは薬師寺さんの作品。こちらも背景は単色です。男の子が釣り針に引っかかって釣り上げられているようです。不思議といえば不思議です。隣にいらっしゃった薬師寺さんにも、モチーフについてお聞きして見ました。すると日常の中の「無」をテーマにしておられるとのことでした。何か禅問答のようです。

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 薬師寺希実さん、途絶えた交信

こちらは女性がテーブルに向って腰掛けているようなのですが、なぜだか椅子が描かれていません。日常生活の中でいかにもありそうな風景を、何か別のものと組み合わせてみたり、当然あるはずのものが一つ欠けただけで、ちょっとシュールな非日常が現れてくるようです。ただし、単に荒唐無稽な非日常が描かれているだけかというと、それだけでもなさそうです。人物の外見をきれいに描いた絵には決して現れてこない、面白味と、スパイスのきいた、少々のほろ苦さとが入り混じって、むしろ、よりリアルに表現されているようにも感じられました。

田中美代子展「余暇」に行ってきました

“Roppongi One Shot Art Week”の一環として開催されていた田中美代子展「余暇」に行ってきました。会場は、国立新美術館の入り口近くにある六本木605画廊です。建物の表通りに面したところには、全く案内が出ていないので、いつも少々不安になるのですが、建物に入ってエレベーターに乗り、6階でおりると、605号室の扉に案内の紙が貼ってあったので、やれやれと安心しました。

展示会場に入ると、KURUM’ART contemporaryの車さんと、作家の田中さんに迎えていただきました。

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桜風1

おや、このキャラクターにはどこか見覚えがあります。尾形光琳や俵屋宗達が描いた、風神雷神図にそっくりです。でも、何かちょっと変ですね。なぜだか、胸にはおっぱいがあります。それに、桜吹雪の中で、なんだか楽しそうに走り回っている子供のようにも見えます。

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風神雷神

こちらの絵のタイトルは、「風神雷神」そのものでした。でも、こちらはポーズや表情がちょっと可愛らしいのですが、今一つ、迫力はありません。ちょっとお仕事は休憩中? それともお互いに目配せしながら、本番前のリハーサルの最中でしょうか?

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旅の相談

あらあら、こうなってしまうと、単に世間話に花を咲かせているだけ? にも見えてしまいます。

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風神

田中さんによると、以前は関節人形の絵を描かれていたそうなのですが、あるとき風神雷神の絵を描いたところ、予想以上に評判が良く、もっと見てみたいという方が多かったそうなので、昨年は、風神雷神の絵ばかりで、個展を開かれたそうです。すると、今度は、風神雷神以外の絵も見て見たい、との要望もあったとか…

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花見1

そんなわけで、今回は、風神雷神以外の絵も描かれたとのが、この絵なのだそうです。恐らく何か別の神様たちなのだろう、とは想像するのですが、なんだかそれぞれ、思い思いにお花見を楽しんでいるようです。

思わずふっと肩の力が抜けるような、楽しいひと時を過ごさせていただきました。

沖元かおる個展-OPERAN-に行ってきました

沖元かおる個展-OPERAN-を見に、銀座にあるギャラリーSTAGE-1に行ってきました。最寄りの駅ではありませんでしたが、地下鉄の京橋駅から、他のギャラリーに立ち寄りながら、ぶらぶらと歩いて行くと、左手に、古いレンガ造りのビルの前に、案内の看板が出ていました。

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個展会場入り口の看板

展示会場に入って、まず気が付いたことは、今回の個展には、バイオリニストを描いた作品が一枚もないということでした。沖元さん、と言えばバイオリニストの画家という印象が強かったので、意外に感じました。沖元さんご本人に伺ったところ、「バイオリニストは自分の中では、やり尽くした」とのことでした。

今回の個展のタイトル、OPERANというのは、スェーデン語でオペラのことだそうです。スェーデン滞在中にたまたま目にした、オペラのポスターからインスピレーションを得たとのことです。

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To be or not to be

この作品のタイトルは、シェイクスピアの「生きるべきか死ぬべきか」から来ているようです。二種類の色の異なるバラが描かれていますが、それぞれの作品の中にも、二種類のバラが異なる色と、片方は輪郭のみで描かれています。時間の流れを示すものかも知れませんし、生の中にも死があり、死のなかにも生がある、という二重性を意味しているようにも見えます。技法としては、透明なアクリル板の裏側に、異なる色で重ね描きされているようです。今回の個展の印象を一言で表すと、「対称性」ということでしょうか。

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鏡の中の鏡

今回の個展では、バイオリニストは描かれていませんが、作品から弦楽器の音は聞こえてきます。「鏡の中の鏡」は、静かな深みを感じさせる音楽で、ピアノを伴奏にして弦楽器で演奏されるようです。この作品は左右対称に描かれていますが、バイオリンの音階のゆっくりとした上がり、下がりが時間に対して対称であるという、この曲の特徴が表現されているのかもしれません。

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OPERAN Dear

Dearというタイトルのオペラがあるのか、どうかは、知らないのですが、この作品も左右対称です。絵画の中に対称を持ち込むと、画面が安定するのかもしれませんが、そのかわりに、やや単調な印象も受けます。ところが、この作品は、表面がごつごつしていて、単調さを感じさせません。シンプルな曲ほど、楽器の音色そのものの美しさが際立つのに、似ているのかもしれません。沖元さんによると、マチエールを出すために素材としてセメントを使っているとのこと。製作中に、セメントが崩れ落ちてしまうこともあったそうです。沖元さんの発想の自由さ、大胆さと行動力は、モチーフが変わっても健在のようでした。

FACE展2018に行ってきました

FACE展2018を見に、損保ジャパン日本興亜美術館に行ってきました。あいにく、天気は雪混じりの雨だったので、新宿駅からできるだけ地下を通り、損保ジャパンのビルの少し手前の交差点で地上にでました。

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 展示会場の入口にて

展示会場に入ると正面に、今年のグランプリ作品が展示されていました。

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 仙石裕美さん、「それが来るたびに跳ぶ 降り立つ地面は跳ぶ前のそれては異なっている」(グランプリ)

裸足の女性が大縄跳びを跳んでます。ミケランジェロ風のたくましい脚ですが、顔は見えません。縄ははるかに長いのに、跳んでいるのは一人だけのようです。はたして、とんな顔で跳んでいるのか興味がわきます。タイトルから想像するに、「とにかく、縄が来たんだから、跳ぶしかないでしょ、理屈じゃないのよ」という状況のようです。赤い色が生きるエネルギーを強調しているようです。古今、女性像は絵画のモチーフですが、現代絵画では、女性もたくましく描かれるようです。

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 阿部操さん、「The beautiful day」(優秀賞)

一転してこちらでは、とても淡い色彩で、ごく自然体の静かなポーズで女性が二人描かれています。夏でしょうか、半そでにサンダル履き。背景は海と砂浜のようです。陽ざしは強そうですが、陰影は、ほとんど感じられない。目もはっきりと見開いていて、まぶしい様子もありません。油彩ですが、伝統的な西洋絵画の手法でもないようですし、かといって、日本絵画でもない、独特な表現のようです。阿部さんは、昨年、一昨年と、一人の女性を描いて入選されていますが、今年は二人描いて「優秀賞」。もし、三人描いていたら、果たしてどうなっていたのでしょうか?

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 佐藤凱さん、「網」(審査員特別賞)

こちらの女性は、輪郭も色も、くっきりと描かれています。毛糸の網目も細かくていねいに描かれています。よく見ると、女性の背景に、一羽のすずめのような鳥が描かれています。鳥は、かすみ網のような網を破って、今まさに、飛び出したところのようです。女性の顔やポーズからは、「私だってやればできるのよ…」といっているような、自信が感じられます。

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 赤枝真一さん、「ほんとは優しい子」

この作品は、キャンバスの形が四角ではありません。絵に合わせた形に切り取られた板にキャンバスの布が貼られているのかもしれません。タイトルからの想像ですが、本当は優しい子なんだけど、今は一時的にご機嫌が斜め、ということのようです。背景にはピンク色の、妙に高い顔の高さまであるブロック塀が描かれていて、足元には枯れ葉が降り積もっています。一見穏やかに見えながらも、実はしっかりと閉じ込められていて、そう簡単には身動きできないような、それでいて、このままではいずれ埋もれてしまうような、現代の若者が感じている社会へのいらだちを暗示しているのかもしれません。

FACE展は、他の公募展と比べて、女性をモチーフにした作品が少ないように思いますが、入選作品、入賞作品の女性像を拝見すると、単に絵として質が高いというだけではない、なにがしか、それぞれ、ただならぬ気配を醸し出しているようです。

第51回かわさき市美術展

かわさき市美術展を見に、川崎市市民ミュージアムに行ってきました。JR南武線の武蔵小杉の駅前から、市民ミュージアム行きのバスに乗ったのですが、いつもよりも、ずいぶん乗客が多い感じです。

2018_Kawasaki_Shibiten_01 川崎市市民ミュージアムの入り口看板

おやっ、「みうらじゅんフェス!」と「かわさき市美術展」が同時開催中でした。そのせいか、いつもの市民ミュージアムとは様子が違うようでした。とにかく、びっくりするほど、人がたくさんいます。

2018_Kawasaki_Shibiten_02 ミュージアムショップ

ミュージアムショップ(みうらじゅん風に言えば「いやげもの売り場?」)も昨年と比べて大賑わい。みうらじゅん関係はもちろん、それ以外の商品も、店員さんの数も増えています。ともあれ、市民ミュージアムに活気が戻ってきたのはうれしいことです。

「みうらじゅんフェス!」のにぎわいから、ちょっと離れて、「かわさき市美術展」の会場へ向かいました。円形の広場をはさんで、反対側の展示室です。昨年と比べて、「かわさき市美術展」のポスターや看板のデザインが一新され、色とりどりとなって、楽しい感じになりました。今年はどんな作品に会えるか楽しみです。

2018_Kawasaki_Shibiten_03 千葉純子さん「日常」

さつまいもがたくさん描かれています。収穫したばかりでしょうか? まだ根もついているようです。千葉さんは、いつも農産物に関係する絵を出展されているようです。川崎市というと工業都市のイメージが強いのですが、千葉さんの絵を拝見すると、ちょっと気持ちが温かくなるような気がします。

2018_Kawasaki_Shibiten_04 宇田さよさん、「気」

これはお地蔵さまでしょうか? みんなで、お花見をしているようす。なんだかとても楽しそうです。そういえばもうすぐ、お花見のシーズンですね。

2018_Kawasaki_Shibiten_05 ベルトン・ジェイミーさん、「楽しい方の道」

お姉さんと弟くんでしょうか? はだしで凸凹のクッションの上を歩いています。おとなにとっては、なんでわざわざそんな所を、と思うのですが、子供達にとっては、本当に、こっちの方がよほど楽しい道のようです。

2018_Kawasaki_Shibiten_06 土田匠実さん、「静まり返った、そんな夜は…」

土田さんは、美術大学を卒業してまだ1年とのこと、生田緑地のそばに住んでおられるそうです。森の中の夜遅くには、昼間とは違う何かの気配を感じます。もしかすると、こんな生き物が出没しているのかな???

2018_Kawasaki_Shibiten_07 永井武志さん、「自画像」

強い意志を感じました。2年前の「僕のおぱあちゃん」も良かったですが、今回は、より頼もしい感じの絵になっているようです。

さすが、150万都市の川崎市で最も歴史のある公募展だけあって、皆さん、力作ぞろいです。いろいろな世代の方々が、今という時代をいっしょに生きていることを感じることができるのは、貴重な展覧会だと思います。ただ、同時開催の「みうらじゅんフェス!」と比べると、お客さんの入りは、今一つ。協賛してくださる会社がたったの2つだけというのも、少々寂しい気がしました。もっと川崎市にも、市民のアートを応援してくださる企業があっても良いような気がしますが…。

第41回五美術大学連合卒業・修了制作展に行ってきました

平成29年度第41回、東京五美術大学、連合卒業・修了制作展を見に、国立新美術館に行ってきました。国立新美術館では、若手の海外研修生の作品を紹介するDOMANI・明日展も同時開催中でした。会場のあちこちで、若手作家たちの熱気が溢れかえっています。
Gobidai_2018_01  五美大展のポスター
東京五美術大学というのは、武蔵野美術大学、多摩美術大学、女子美術大学、東京造形大学、日本大学芸術学部、のこと。毎年この時期に卒業製作の作品を展示しています。

Gobidai_2018_02 戸井李名さん、Mt.Fuji、武蔵野美術大学

タイトルから推測すると富士山をモチーフにした作品です。富士山と言えば、日本を代表する山。2013年には、世界文化遺産にも登録されました。昔から、富士山は多くの画家によってさまざまに描かれてきましたが、こんな風に富士山を描いた絵は珍しいのではないでしょうか? 葛飾北斎もびっくり。このようなベラボーな作品は、もしかするとTaro賞が似つかわしいような気がしました。

Gobidai_2018_03 西原澄乃さん、fluid、武蔵野美術大学

女性が泳いでいます。肌に波紋がまつわりついています。一切、他のものは描かれていないので、すっきりした画面構成であると同時に、水面の模様は複雑です。羽衣伝説の天女のようにも見えます。そういえば、羽衣伝説で有名な三保の松原も富士山世界文化遺産の一部でしたね。

Gobidai_2018_04 Yumiさん?、武蔵野美術大学

なぜか、作品名の表示がありませんでしたが、この絵は間違いなく、Yumiさんだと思います。Yumiさんは、シェル美術賞2016、2017に2年連続で入賞されています。ペインティングナイフを使って、シンプルに安定的な三次元空間が表現されています。

Gobidai_2018_05 岡田聡平さん、武蔵野美術大学

ずっしりとした構造物がていねいに描かれています。そう簡単には動じないぞ、という強い意志と安定感を感じました。

Gobidai_2018_06 小野仁美さん、透き色を待つ、武蔵野美術大学

この作品は、オーガンジーという布とアクリル絵の具を何層も重ねて描かれているそうです。そのために内部で光の干渉がおきて、モアレ模様がみえています。というようなお話しを、同時開催中のRoppongi α Art Week「小野仁美展」の会場(六本木605画廊)でギャラリーの方に教えていただきました。

Gobidai_2018_07 MU Ziyueさん、顔、多摩美術大学

女性の顔が大きく描かれています。瞼に目が描かれているらしく、本当は目を閉じている、らしい。口の中に半透明に見えるものを加えており、口の周りが濡れている、らしい。インパクトのある作品です。

Gobidai_2018_08米山里々花さん、くさっ…。、多摩美術大学

こちらの作品では猫の顔が大きく描かれていて、迫力があります。猫の目が何かを訴えかけています。

Gobidai_2018_09 杉山愛莉さん、大猫行列、女子美術大学

こちらは、猫の立体作品。40体ほどの白い猫が、2本足で歩いています。よく見ると、一つ一つ表情が違っていて、しかもリアルです。あっぱれです。

他にもたくさん、面白い作品、素晴らしい作品を、拝見しました。あまりにも作品数が多いので、全部はとてもご紹介できません。みなさんありがとうございました。そして、卒業おめでとうございます。

20th DOMANI・明日展に行ってきました

「20th DOMANI・明日展」を見に、国立新美術館に行ってきました。

DOMANI2018_01 敷地の入口の看板

「DOMANI明日展」というのは、「新進芸術家海外研修制度(文化庁)」を使って海外で研修を積んだ若手芸術家の成果の発表会で、今回が20回目なのだそうです。展示会場の入口には、「全作品撮影OKです」との表示がありました。昨年度とはルールが変わったようです。時代の流れでしょうか?

DOMANI2018_02 田中麻記子さん、「Critique」、13×14 cm.

田中さんは、フランスのパリに派遣されたようです。パリに移ってから、絵のスタイルが変わったとのこと。異文化と接した影響でしょうか? この絵は、一枚の絵の中に「変化前」と「変化後」とを同居させて描いてみたのかもしれません。パリといえば、19世紀後半、西洋の画家たちが、一斉に日本の絵画に影響を受けた「ジャポニスム」を思い出しました。田中さんは、日本人なのに、パリに行って初めて、浮世絵のような線画に目覚めたというのは面白いですね。

DOMANI2018_03 田中麻記子さん、「Band」、10×15.7 cm.

この絵をみると、葛飾北斎の「北斎漫画」を思い出しました。一人一人の動きが楽しい。田中さんは、「現代の北斎」なのかもしれませんね。

DOMANI2018_04 三宅砂織さん、「The missing shade 40-1」、56 x43 cm.

三宅さんは、Y氏が残された、アルバムやスクラップブックなどからモチーフを得て、写真の技法で作品を制作されています。Y氏というのは1913年生まれとのこと。おじいさんか、ひいおじいさんの世代でしょうか? Y氏は、1936年に開催された、ベルリンオリンピックに体操の選手として出場されたとのこと。今でもそうですが、当時としても、恐らく大変な名誉なことだったに違いありません。

DOMANI2018_05 三宅砂織さん、「The missing shade 35-1」、56 x43 cm.

ところが1936年のベルリンオリンピックは、別名ヒトラーのオリンピックとも言われており、その後、1939年からは第二次世界大戦が始まっています。オリンピック選手だったY氏も、戦争のために一兵士となられたようです。軍隊の中でも、尺八を吹く機会があったかと思うと、少しは気持ちが和むような気がします。

おりしも、「DOMANI明日展」の会期中に、お隣の韓国では、冬季オリンピックが開催。その一方では、戦争の足音が聞こえてくるようなできごとが、次から次へと報道されています。どうか、歴史が繰り返さないように、と祈るばかりです。

DOMANI2018_06 中谷ミチコさん、「空が動く」、83 x163 x6 cm.

これは、ずいぶんたくさんのカラスが描かれた絵ですね、と、うっかり通り過ぎるところでした。ちょっと、展示の仕方が、変わってますね、しっかりと木の枠に固定されている。絵の厚さが6 cm?、ちょっと厚いですね。

DOMANI2018_07 中谷ミチコさん、「あの山にカラスがいる」(部分).

中谷さんのこの作品は、実は絵ではありませんでした。黒いカラスは、黒い半透明の樹脂でできています。しかも、この樹脂は、画面から飛び出しているのではなく、画面の奥に埋め込まれていました。気が付いてみると、えっ、とびっくりです。思わず、あらためてすべての作品を見直してしまいました。

作り方は、粘土で型を作って、石膏を流し込んで、できたくぼみに樹脂を入れて固める…..何とも手間のかかる技法のようです。とはいえ、絵の具ではこのような光の屈折、透過を使った表現はできないので、手間をかけた分、その効果は確実に現れているようです。

それから、樹脂が固まる際の硬化収縮は問題にならないのか?とか、型を使うならば、ブロンズのようにいくつかの作品の複製が可能なのだろうか?とか、作品を鑑賞するには余計かもしれない疑問もふと頭をよぎってしまいました。

「クインテットIV 五つ星の作家たち」を見てきました

クインテットIV 五つ星の作家たち」を見に、損保ジャパン日本興亜美術館に行ってきました。良く晴れてはいましたが、気温は低く、冷たい風が吹き抜ける新宿の高層ビル群の間を通って、美術館の前に出ました。

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美術館建物の入り口の看板

エレベータに乗って、42階に向かいます。受付の前を通って、窓から外が見える廊下を歩き、展示会場の入り口に到着しました。この展覧会では、作品の写真撮影可とのこと、非営利でならば使用可とのことでした。

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船井美佐さん、「Hole/桃源郷/境界/絵画/眼底」

今回の作品のテーマは、「具象と抽象の狭間」なのだそうです。会場に入って迎えてくれたのは、丸い大きなアクリル鏡の作品でした。山や川や樹々などの様々な形にくりぬかれています。また、周囲には、蝶の形の鏡が配置されています。素材が鏡なので、展示会場の様子が反射して映りこんでおり、視覚的には多層な作品になっています。

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室井公美子さん、「Doxa I」

こちらは、素材としては油彩画のようですが、何が描かれているのか、判然としていませんでした。絵の具が垂れているようなところもあります。タイトルの「ドクサ」は哲学の用語のようですが、ますます、謎に包まれるばかりです。

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竹中美幸さん、「何処でもないどこか(境界に浮かぶ橋)」

こちらは、透明な樹脂に、少し色をつけて、丸い形に固めたものがちりばめられているようです。照明の光をきらきら反射してきれいです。水滴の動きのようなものが感じられました。

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青木恵美子さん、「お願い」

こちらは、アクリル絵の具が主なのでしょうか? 発色が鮮やかです。画面の大部分が単色のグラデーションのみで描かれており、画面の上部と、下部にアクセントとして別の色が使われています。はるかかなたの地平線やひろびろとした空間を連想しました。

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田中みぎわさん、「水の音」

遠目には、白黒写真かな、と思ったのですが、近づいてよく見ると、水墨画でした。川の水面に映った樹々の反射の表現が印象的です。

短い時間でしたが、良質で粒ぞろいの作品を拝見することができ、帰り道では心なしか、心温かく、さわやかな気持ちで会場をあとにすることができました。

シェル美術賞展2017に行ってきました

シェル美術賞展2017」を見に、国立新美術館に行ってきました。

今回は、同時開催されている主要な企画展がなかったためか、全体的に人が少ない感じで、その分ホールが広く感じられました。一階の奥の1B展示室で「シェル美術賞」の看板を見つけました。
いずれも力作ぞろいでしたが、中でも気になった作品をいくつかご紹介します。

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シェル美術賞展2017の入口

加賀谷真秀さんの「rhythm」という作品は、4人の子供が楽しげにドラムをたたいています。軽やかな音が聞こえてきそうです。タイトルの「リズム」から、ホドラーの「良きリズム」を連想していまいましたが、ホドラーよりも、明るい色彩と軽いタッチです。

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加賀谷真秀さん”rhythm”

松本宙さん「都市の綻び、記憶の綻び」の画面の中央に川が流れていて、その向こうに古い家並みや工場が描かれています。果たして、いつの時代の何処を描いたものなのか、気になりました。戦争中に描かれたという松本竣介の「Y市の橋」を連想しました。雰囲気が似ているようにも思いますが、時代がずいぶん違うようです。

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松本宙さん「都市の綻び、記憶の綻び」

竹内優文さん「浴場」は、昔の銭湯の洗い場がリアルに描かれています。それにしても、あちらこちらが痛んでいるところまでリアルです。蛇口もそれぞれ違う形。それでも、昔は、多くの人が訪れて、毎日の疲れをいやしていた様子が妙に偲ばれて、不思議な感じです。

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竹内優文さん、「浴場」

YASUKA.Mさんの「金環日食」は、鉄板の錆びで描いたものだそうです。そもそも鉄錆びで絵を描こうという発想にびっくり、鉄錆びと金環日食という取り合わせも不思議ですが、どんな素材を使ってでも、アート作品にしてしまう力量に感服しました。

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YASUKA.Mさん、「金環日食」

杉浦彰彦さんの「現実」は、おじいさんが椅子に座って、こちらをにらみつけています。足は白く抜けているし、手は赤い線でかたどられているし、顔半分も赤くなっていて、画面のところどころ絵の具は垂れています。それでも、妙に存在感があり、こちらの心の奥まで見透かされているようです。どこかで見た顔だなと思ったら、白隠のだるまに似ているようです。

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杉浦彰彦さん、「現実」

YUMIさんの「build」は、画面の大半が大胆にも、四角い形状に同じ色で塗られています。わずかに塗り残された領域から、下塗りの色がのぞいています。最小限の少ない色数と、単純に見える画面構成から、三次元的な空間の広がりと、地層のような時間の積み重ねが、じんわりと、しかもゆったりと、感じられるようです。そういえば、昨年のちょうど今ごろ、JINEN Galleryで開かれたYUMIさんの個展に伺ったことを想い出しました。

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YUMIさん、「build」