岡本太郎とメディアアート展に行ってきました

岡本太郎とメディアアート展を見に、川崎市岡本太郎美術館に行ってきました

「岡本太郎とメディアアート展」を見に、川崎市岡本太郎美術館に行ってきました。今回は、生田緑地の正門からではなく、反対側の西口から入ってみました。ちょうど紅葉のシーズンで、落ち葉が階段に落ちていてきれいです。階段をおりていくと、芝生の広場の向こうに、白い「母の塔」が見えてきました。「ベラボー」な大きさですが、すっかり生田緑地の森に溶け込んでしまっています。まるで100年も200年も前から、そこに立っていたかのようです。

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美術館の入口の反対側、カフェの前あたりに、なにやら赤いヒトデのような形の巨大なオブジェが置いてありました。真ん中に目のようなものが付いていて、機械仕掛けで、目が閉じたり開いたりしています。岡本太郎が考えた「パイラ人」という宇宙人をモチーフにして、現代作家の高橋士郎さんが手がけたものだそうです。

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今回の「メディアアート展」では、展示会場での写真撮影が可能とのことでした。いつもは、常設展の会場となっているところで、企画展示が行われていました。現在、本来の企画展示室は工事中のようです。立体作品が展示してあるスペースには、岡本太郎の作品にプロジェクションマッピングの映像が投影されていました。色やパターンが時事刻々と、変化していきます。もともとは「樹人」という作品だそうですが、新しい技術との組み合わせで、新しい作品に生まれ変わったかのようです。この作品を制作したP.I.C.S.TECHというグループは2012年東京駅の3Dプロジェクションマッピングも手掛けられたとのことです。

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その近くには、光を発している別の作品がありました。この作品は、岡本太郎が生前、名古屋のデパートの外壁の装飾をデザインしたものを再現したものだそうです。

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会場の出口付近には、実際に名古屋のデパート、オリエンタル中村百貨店、の装飾に使われたときの写真が展示されていました。比べてみると、確かに同じ作品です。デパートそのものは、今はすでになくなっているようですが、アート作品は形を変えて残っていくのですね。

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岡本太郎といえば、油彩画や、レリーフ、立体作品など幅広い分野の作品を残しています。今回の展示でも、油彩画やレリーフの作品も展示されていました。昔の手法と、今の手法を比べてみると、どんなに新しい技術を使ってみても、「本質的には岡本太郎はやっぱり岡本太郎」との印象を受けたので、少々驚きました。

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「油絵とか、彫刻とか、表現の手法そのものが問題なのではない」、それ見たことか、といわんばかりの口調の、岡本太郎の声が聞こえてきそうです。今、もしも岡本太郎が生きていたなら、3次元コンピュータグラフィックスだの、プロジェクションマッピングにも、果敢に挑戦していたのかもしれません。ただし、どんなに新しい技法を使ったとしても、「あっ、これは岡本太郎の作品だ」と、すぐにわかってしまうんだろうなと、今回のメディアアート展を拝見して、そんなことを想像してしまいました。

THE ドラえもん展 TOKYO 2017に行ってきました

THE ドラえもん展 TOKYO 2017を見に、六本木ヒルズ 森アーツセンターギャラリーに行ってきました。

この企画展は、「ドラえもん」をモチーフにして制作した、現在活躍中のいろいろな作家の作品を展示していました。一部の作品を除いては、写真撮影可とのことでした。いくつかの作品を紹介します。

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村上隆さんのドラえもん

ドラえもんやのびたくんたちが、タケコプターで空を飛んでいます。よく見ると、地面には村上隆さんの作品に良く出てくるお花のキャラクターが描かれています。あまりにも違和感がないので、うっかり通り過ぎてしまいそうです。

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福田美蘭さんのドラえもん

レンブラントの自画像の背景の壁にドラえもんが描かれています。お得意の名作絵画のパロディ版のようです。気難しそうなレンブラントと、舌をだしたドラえもんの表情が対照的で、和感のある組み合わせです。もっとも、この展覧会自体、ある種のパロディなのかもしれませんが…。

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会田誠さんのドラえもん

よくみると湯気が人の形になって、シャワーを浴びているようですが…

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山口晃さんのドラえもん

漫画風にコマわりをした作品です。のびた君が「ぼくいつか死ぬの?」とドラえもんに聞いています。背景が水墨画風に描かれています。

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森村泰昌さんのドラえもん

森村泰昌さん自身がドラえもんになりきって、ポケットから何か取り出しているみたいですが、衣装はちょっと変ですね。

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奈良美智さんのドラミちゃん

ドラミちゃんがジャイアンにリボンを取られて泣いているようです。これは下絵で、封筒の裏に描かれているようです。

他にも、撮影禁止ではありましたが、しりあがり寿さんの「劣化防止スプレー」というアニメーション作品など、いろいろな作品がありました。

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ドラえもん展会場出口付近から見た風景

ショップでは、オリジナルの商品に加えて、川崎市の藤子・F・不二夫ミュージアムのグッズも販売されていました。ショップを出たところで、窓の外を見ると、眼下に青山墓地や国立新美術館がよく見えました。

青参道アートフェアに行ってきました

青参道アートフェアに行ってきました。地下鉄表参道の駅のA1番出口からでて、表通りから横道に入った路地沿いにあるいくつもの店舗が会場になっていました。

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青参道アートフェアの案内図. 案内図の後ろに銀色の風船が見えます. このお店はアルゼンチンの衣服を販売しているお店で, アルゼンチンの作家のコラージュ作品を展示していました.

このアートフェアは、ちょっと変わった企画です。特定の大きな会場で開催されているわけではなく、小さなお店がいくつも集まって、それぞれの営業中の店舗の中の一角に、別々のアーティストの作品が展示されていました。参加しているお店と参加していないお店が混在しているので、最初ちょっと迷ったのですが、すぐにお店の前にある銀色の風船が、目印になっていることに気が付きました。

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いつもそこにいる天使. 焼き物の作品. niuさん

思い切ってお店に入ってみると、店員さんが親切に作品を説明してくださいました。お店よっては、作家さんご自身が作品について説明してくださいました。上のniuさんは、ご自身の経歴についても説明してくださいました。犬が二匹飛び跳ねている彫刻「しあわせな犬」をポーラ美術館で展示しているそうです。

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あべせいじさんの作品

この作品は、ビンの中にクジラが泳いでいて、その背中に燈台があるという不思議な世界です。燈台の下にはゾウがいて、ゾウの鼻から雲が湧き出ています。子供服のお店”TRICO FIELD“に展示されていました。

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HAyUさんの作品

針金でできた立体的な動物の作品。どの角度からみても、ちゃんとその動物に見えたので感心しました。

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星野ちいこさんの作品

水彩画で人物の顔が描かれています。とてもシンプルそうな手法にみえるのに、いかにもその人という雰囲気が醸し出されています。展示会場の美容師さんも、本人にそっくりだとおっしゃっていました。

まだまだ他にも会場があったのですが、あいにくの雨天だったので、全部見るのはあきらめてしまいました。これだけの企画、4日間の開催というのは、ちょっともったいないような気もしました。

仁科幸恵展に行ってきました

仁科幸恵さんから、ご案内のダイレクトメールをいただき、代官山のギャラリー子の星に行ってきました。仁科さんは、昨年の7月にも同じ場所で個展を開催されました。ギャラリー子の星に伺うのは今回が2回目です。

台風の接近で、雨が降りしきる坂道を、昨年の記憶を頼りに歩いて行くと、こじんまりしたギャラリーの前にでました。ガラスの扉をあけると、仁科さんご本人が出迎えてくれました。

展示作品を一通り見て回ると、昨年の個展のときに見た絵とは異なっており、すべて新作とのことでした。大半の作品は、若い女性を描いたもの。仁科さんによると、モデルさんは学生自体からのお友達だそうです。

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ほおづえ, パネル・油彩 227×227

若い女性の顔が、写実的に丁寧に描かれています。顔や手のつやからは若々しさを感じる一方で、ほおづえをついたポーズからは、何かをややシニカルに、あるいは冷ややかに見ているようにも見受けられます。ついつい、いったい何を見ているのか、気になってしまいます。

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心の奥, パネル・油彩 333×242

こちらの絵は、ピンク色の背景に、若い女性の顔が描かれています。ただし、顔はややうつむき加減で、何かを見つめている様子。「心の奥」というタイトルから、見つめているのは、自身の心の中のようです。

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静かなひととき, パネル・油彩 652×530

こちらの絵は、一見、モデルさんにポーズをとってもらい、写実的に写したようにも見えます。とはいえ、その眼は何か遠くをしっかりと見つめている様子。しとやかさの中に、芯の強さを感じさせる作品です。

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正月に会った猫, パネル・油彩 227×227

この絵は、ご自宅の近くに住む野良猫を描いたとのことです。「迎春」のおめでたい正月飾りをバックにしていますが、ただならぬすごい迫力の目つきでこちらをにらんでいるようです。

若い女性や猫などをモチーフにして、あくまでも写実的な技法で描きながら、仁科さんの絵には、単に「美しい」とか「かわいらしい」といった形容だけには収まりきれない、ただならぬ「何ものか」が、あくまでもさりげない形で漂っている、そんなギャップに魅力があるようです。

ヨコハマトリエンナーレ-2017-に行ってきました

ヨコハマトリエンナーレ-2017-を見に横浜美術館に行ってきました。

横浜高速鉄道みなとみらい線のみなとみらい駅で下車、出口からエスカレータで地上の横浜美術館前に出ました。建物の様子がいつもと違い、何か赤いもので飾られているみたいです。


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ヨコハマトリエンナーレ-2017-の会場, 横浜美術館. 外壁を用いたインスタレーションは, AI Weiweiの作品.

近づいて見ると柱に見えたものは救命胴衣がびっしりとぶら下げられており、窓と思しきものは、救命ボートだそうです。現代アートはこんな形で現代という時代を切り取って提示もしているようです。

会場に入ると、いろいろな国からいろいろな作家のたくさんの作品が展示されていました。


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Rob Pruittの作品, オバマのアート

壁一面に赤色と青色の同じサイズの絵がタイルのように敷き詰められていました。遠目にはぼんやりとしているので、何の絵だろうと近づいてみると、一枚一枚が、オバマ元アメリカ大統領を描いたものでした。作家のRob Pruittのさんは、オバマ大統領が在任していた8年間、ほぼ一日一枚のペースで、オバマ大統領の写真を元に、彼の絵を描き続けていたのだそうです。オバマ大統領の8年間を、毎日こんな風に描いていた画家がいたのかと、感心すると同時に、あらためてこうしてながめてみると、オバマは実に絵になる大統領だったことに気がつきました。一方、あのYes we can!の高揚感から8年もの月日が過ぎ、自分自身のこの8年間はどうだったのかと、思わず感慨深く拝見しました。

一人の人間を根気強く描き続けるという意味では、木下晋さんの絵も似ているのかもしれません。


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木下晋さんの作品, 合掌図, 懺悔

らい患者の顔、手、足が、鉛筆だけで描かれています。らいという病気を引き受けて生きている方、そのような方をモチーフとして選ぶ作家の姿勢。いっさいの装飾を排したシンプルな手法。圧倒的な現実感と存在感を感じました。そういえば、木下晋さんは、以前、NHKの日曜美術館でも取り上げられていたことを思いだしました。

同じ事象を毎日毎日観察し続ける、といっても、Oliver Chanarinさんの作品の場合は、ちょっと風変わりです。


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Oliver Chanarin, Wave Directions in the Mediterranean Today

画面に白黒で矢印が描かれており、文字で本日の地中海の波の方向と日付が記されています。矢印がはっきり描かれた日もあれば、ぼんやりと描かれた日もあります。ぼんやりと描かれたほうは、山水画のようにも見えます。シンプルな構成の作品でも、繰り返し繰り返し表現されることで、もしかすると、その中から人を惹きつける何かが生まれることがあるのかもしれないと思いました。

これは、作品ではありませんが、なかなか良い表示です。写真撮影と利用は非営利ならばよいそうです。ちなみにこのブログも非営利です。念のため。


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いろいろな作品が、いろいろな角度から、たくさんの人にシェアされるとよいですね。

戸嶋靖昌記念館に行ってきました

戸嶋靖昌記念館に行ってきました。事前の電話予約が必要とのことでしたが、家を出る直前の予約(到着の約1時間半前)でも受け付けていただきました。

地下鉄半蔵門線の半蔵門駅の4番出口から、歩いて3分ほど、ダイヤモンドホテルの隣のバイオテックという会社の建物の前に戸嶋靖昌記念館の案内を見つけました。


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戸嶋靖昌記念館の入口. バイオテックという会社の建物の中にあるようです.


入り口を入ると、正面に受付と、左手には本や絵葉書を販売しているコーナーがありました。入場料のことをお聞きすると無料とのことで、びっくりしてしまいました。個人の美術館とはいえ、入場料が無料というのは初めてです。受付の方が学芸員の方を呼びだしてくださり、学芸員の方がわざわざエレベータで展示室まで案内してくださいました。エレベータを降りるとフロア全体が展示室となっているようです。到着したときは、まだ他のお客さんは誰もいませんでした。学芸員の方が、展示内容について簡単に説明をしてくださいました。

戸嶋靖昌のことを知ったのは、今年1月、NHKの日曜美術館でグラナダ 魂の画譜 戸嶋靖昌(としまやすまさ)孤高のリアリズムという番組を見たときでした。それ以来、ずっと気になってはいたのですが、今回、ふと思い出して調べてみると、NHKのでかけよう日美旅第35回 スペイン・グラナダへ 戸嶋靖昌を探す旅のサイトで、この戸嶋靖昌記念館が紹介されているのを見つけました。

NHKの番組でも紹介されていた、戸嶋靖昌がスペインのグラナダに滞在中に描かれた人物画の作品、老女ベルタや、アルバイシンの男-ミゲールの像-も展示されていました。戸嶋の人物画は、まるで古びたシミだらけの壁から、人物の顔が浮かび上がってくるように描かれています。絵の中の人物は、こちらを見つめているようでもあり、全く何も見ていないようでもあり、笑っているようでもあり、不機嫌そうでもあります。表面的な解釈を、断固拒んでいるかのようでもあり、一方では、何かをやさしく語りかけられているようにも感じられます。

番組によると、ミゲールというのは、酒場に入り浸っていたような人物だったそうですが、戸嶋はこのモデルについて、ミゲールは、実に奥底に無欲のエレガンスをもっていると述べていたとのこと。エレガンスというのは見た目を形容しているのではなく、生き方を形容していたようです。そしてモデルのエレガントな生き方そのものを画面に再現しようとしていたようです。

画面には、モデルの生き方が表現されている一方で、画家自身の生き方も現れているようにも感じられました。モデルとなる人物が違っても、基本となるモチーフは変わらないようにも見えたからです。

展示室には、戸嶋が若いころに描いた作品も多く展示されていました。武蔵野の林を描いた油彩画や、裸婦を描いた作品などです。若いころの作品にも、晩年の作品に通じるような独特なタッチが、随所に見受けられるように思いました。

帰り際に、学芸員の方から、戸嶋靖昌の晩年、グラナダから日本に戻ってきた後の、この記念館の館長との出会いと、その後の交流についても教えていただきました。そもそものきっかけは、月刊の美術雑誌に載っていた戸嶋の作品の写真を見て、衝撃を受けられたとのこと。それから戸嶋に肖像画の制作を依頼されたのだそうです。お話しを伺ううちに、この戸嶋靖昌記念館自体が、一つのコラボ作品として製作されたのかもしれない、と思えてきました。しかも、かなりエレガントなコラボレーション作品といえそうです。思わず、このコラボ作品が、現代社会に波紋のように静かに、しかもエレガントに広がることを、願わずにはいられませんでした。

ACT ART COM-Art & Design Fair 2017に行ってきました

ACT ART COM-Art & Design Fair 2017を見にアートコンプレックスセンター(The Art Complex Center of Tokyo)に行ってきました。

JR総武線の信濃町駅から、慶応大学病院の入口を左手に見ながら、外苑東通りに沿って、てくてくと歩き、ACT ART COMの看板が見えたところで、左手に折れて、住宅街の路地に入り、アートコンプレックスセンターの建物の前に出ました。いつ来ても、この建物の形には、ちょっとびっくりさせられます。

ACT_ART_COM_2017_01  ACT ART COM展入口の看板

ACT_ART_COM_2017_02  アートコンプレックスセンターの建物

ACT ART COMというのは、才能豊かな若手のアーティスト達を、世の中に広く紹介することを目的として開催されているそうです。展示会場は、地下一階と二階に分かれていました。まずは、地下の展示場を見てみることにしました。

ちょうど梅雨の季節、街中にも、紫陽花の花があちら、こちらで咲いています。アートコンプレックスセンターの建物の前にも紫陽花が咲いていました。そんなこともあって、KURUM’ART contemporaryのブースでは、淡い色調で描かれた、紫陽花の花が目にとまりました。白い背景に、紫陽花の一つ一つの花びらが丁寧に描き込まれています。ちょっと、植物学の標本として描かれている図鑑を想い出しました。そういえば、紫陽花の花びらに見えているところは、植物学的には、「がく」に相当するそうですね。

ACT_ART_COM_2017_03  稲田早紀さん、「聴こえる、はじまりの音に」 318x410mm

作家の稲田早紀さんは、今回展示のために、わざわざ大阪からいらっしゃったそうです。お母さんが庭でいろいろな花を育てておられるとのこと。近くには、黄色いミモザの花を描いた作品も展示されていました。この作品のタイトルは「あなたの日に」。あなたというのは、花を育てられている、お母さんのことかもしれませんね。

ACT_ART_COM_2017_04  稲田早紀さん、「あなたの日に」 158x227mm

少し先のブースでは、枠に納められた、シンプルな形のオブジェが展示されていました。

ACT_ART_COM_2017_05  石川将士さんの作品

作者の石川将士さんによると、これは金属でできているもの、鋳物の技法で作られるそうです。この作品については、素材は鉄で、溶かした鉄を鋳込んで作られてるとのこと。さらに、黒い色をつけるため、お茶で煮込むのだそうです。するとお茶に含まれるタンニンが発色して黒くなる。江戸時代の女性がお歯黒と、同じ着色の原理なのそうです。

ACT_ART_COM_2017_06  石川将士さんの作品

鋳物なので、同じ型を用いれば、いくつも同じ形の作品ができるとのこと。中央に、先ほどの作品と同じ形のものが見えますが、他にもいろいろな作品が、同じ枠のなかに配置されています。ちょっと、お菓子の詰め合わせをイメージしてしまいました。ちなみに、いろいろな形に見える作品は、実は皆、モチーフはもともと「人」なのだそうです。銀色に見えるものは素材がアルミニウム、金色に見えるものは、素材が真鍮なのだそうです。

さて、二階の展示会場では、女性の顔を描いた作品が、たくさん展示されているという印象を受けました。

その中で、ちょっと変わった形の立体作品が目にとまりました。

ACT_ART_COM_2017_07  佐伯裕圭さん, 「もしもし座の姉様」

女性といえば女性のようではありますが、顔にくちばしが付いているようです。三日月の端っこに、ちょこっと腰をかけて、電話をかけている。いま流行りのスマートフォンではなく、昔ながらの固定電話の受話器(しかも黒いタイプなので、アナログ電話か?)のようです。いったい、誰と、何のお話しをしているのでしょうか? 上から吊り下げるという展示方法が、作品の浮世離れした雰囲気を、さらに際立たせているようです。

作者の佐伯裕圭さんによると、もともとは焼き物の作家さんだとのこと(壁際には、焼き物の作品も、たくさん展示されていました)。最近、焼き物ではない、新しい技法に取り組んでいて、「もしもし座の姉様」は、その一例なのだそうです。

ACT_ART_COM_2017_08  佐伯裕圭さん, 「うきて、えがたきもの、朝まだき黄金色」

こちらの女性は、くちばしこそ付いていないようですが、頭の形がとがっていて、ちょっと宇宙人風です。タイトルから、日の出の時間帯の太陽を擬人化した作品かもしれないと思いました。「非売品」とありましたので、記念すべき大切な作品なので売れないのかと、佐伯さんにお尋ねしたところ、「まだ新しい技法で、この先50年、100年と、作品がもつ保証ができないので、売ることはできません」、とのお答えでした。さすがに焼き物の作家さんならではの考え方ですね。

こちらの作品は、石膏の型から作るので、同じ形の作品を作れるとのこと。写真の中央の作品と、左側の作品は、同じ型から制作した色違いなのだそうです。そういえば、こちらの作品の素材は「紙」だとのことですが、色の塗り方が独特で、ちょっと焼き物の絵付けを連想しました。

山口俊朗展–2017 断面”Cross Section”–に行ってきました

山口俊朗展–2017 断面”Cross Section”–を見に、Shonandai MY Galleryに行ってきました。

地下鉄千代田線の乃木坂駅6番出口から、国立新美術館に入り、美術館の一階を通り抜けて正門に抜けました。国立新美術館では、おりしも、ミュシャ展が開催中で、入場まで70分待ちの長い長い行列が建物の外まで伸びていました。大人気です。

美術館の正門を出てから、道を渡って、反対側の階段を降り、裏通りに入りました。一本目の路地を右手に入ると、右手に、山口俊朗展の看板が見えました。古ぼけた感じの看板の周りの板と、ポスターの中の作品の色合いが妙にマッチしています。

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外階段を3階まで上がると、展示会場の入口がありました。展示会場は、手前と奥の二つの部屋に分かれていました。山口さんの展示は奥の部屋で開催中でした。奥の展示会場に入ると、山口さんと作品とが出迎えてくれました。

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画面一面に何やらびっしりと模様が描かれています。ところが、油絵でもなければ、アクリル絵の具でも、水彩画でも、日本画でも、版画でもない様子。これはいったい何でしょうか???

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近づいて、よくよく見てみると、細かい模様が描かれているのですが、規則性があるというわけでもなく、かといって、まったく完全にランダムというわけでもない。

山口さんご本人にお尋ねしたところ、これは和紙の上に透明の絶縁テープを貼り、その上から、水性のペンキを塗って、後からペンキを拭き取るのだそうです。絶縁テープの隙間から、ペンキがしみ込んで和紙に色がつくという手順を、繰り返し踏んで作られるそうです。

絶縁テープの貼り方や、水性ペンキの色を変えると、異なった風合いの作品ができる、ということのようです。遠目には、爬虫類か何か、動物の革のようにも見えますが……

Yamaguchi_Toshiro_04  2017 Cross Section 3, 90 cm x 90 cm mixed media

近づいてみると、確かにテープのような直線と、穴あけパンチで開けたような穴が見えました。表面のてかり具合は、ビニルテープのものだったんですね。下地が和紙なので、完全に人工的な素材にも見えない。小さい四角い切り込みが見えますが、これは切符を切るはさみを使っているとのこと。びっくりです。

Yamaguchi_Toshiro_05  2017 Cross Section 3, 90 cm x 90 cm mixed media, 部分

このような技法は、山口さんが、8年ほど前に、木を使った立体作品を制作中に、偶然見つけたものだそうです。このような技法に気が付いてからというもの、平面作品の制作に没頭し、あれや、これやと、いろいろな方法で試してみているとのこと。

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こちらの作品では、ペンキを完全に取り除かずに、わざと部分的に残しています。それによって、層状の構造が見えていて、また異なった質感が出ています。

山口さんは、これからも生涯かけて、この手法に取り組みたいとのことです。楽しそうですね。

WINTER COLORS (冬の色)を読みました

今回は、絵画に関する小説をご紹介します。Joseph Polack作のWINTER COLORSというタイトルの小説(英語版)です。

この小説には、画家とそのモデルの関係が描かれています。

ヨーロッパ出身で、香港の大学で絵を教えている中年の画家が、主人公です。絵の才能が枯渇してきたと感じていたのですが、中国出身の若い少女をモデルに描くことで、色の感覚が呼び覚まされ、その結果、絵が高く売れるようになります。

画家が、自身の過去を回想するシーンがあります。彼は、東欧出身で、17才のとき、単独雪山を越えてウィーンに入りました。ウィーンでは、お金も身寄りもないのですが、絵の才能を活かして何とか生き延び、パリ、ロンドンへと移り住みます。ロンドンでは、Malenaという若い水彩画の先生に手ほどきを受け、彼女の勧めで公募展に応募したところ、その賞品は芸術大学での奨学金でした。本名はTomasz Adamskiなのですが、ロンドンでは英国風のTom Adamsと名のることになります。高校の卒業証明書もないままでオックスフォードのラスキン大学の入学が認められます。シュールレアリスムの絵画が認められ、やがて香港で絵画を教える教授となりました。

一方、モデルの若い少女は、中国本土出身で、生まれる前に父親を亡くし、祖父母のもとで育てられます。その後、香港に密航し、香港-マカオ間のフェリーの上のレストランでウェイトレスをしていましたが、解雇されたのをきっかけにして、画家の家に住みつきます。画家が趣味の釣りで、たまたまフグを釣り上げてしまったとき、すかさず少女はその場でポケットナイフを使ってフグの毒を取り除き、その場で食べてしまう、というようなワイルドな側面をもっています。彼女も、本名Lin Nao Mingから、大学の偽造学生証ではLin Naomiという名前に変えられてしまいます。(そういえば、谷崎潤一郎の痴人の愛の英訳版のタイトルもNaomiでした)

この小説の作者、Joseph Polack(こちらも、ペンネームであり、本名ではありません)も、出身は東欧なのですが、冷戦時代に祖国を追われ、現在の国籍はスェーデン、住所は鎌倉市という、複雑な経歴の持ち主です。この小説の主要な登場人物である画家とそのモデルが、自らの意思で国境を越えて生きることを選択したという設定であることと、このような作者自身の経歴との間には、何か関係がありそうです。また、国境の壁を容易に越えることができる、絵画という芸術をモチーフに選んだことも、作者の経歴と無関係ではなさそうです。ヨーロッパ出身の画家が、中国本土出身のモデルからインスピレーションを受け取るという主題は、もしかすると、作者の実経験に裏付けられたある種の信念の、比喩的表現なのかもしれません。

少女が竹でできた笛を吹くかたわらで、画家はマホガニー製の絵筆を使って絵を描くシーンがでできます。竹とマホガニーという素材の差が、東洋と西洋の文化の違いを際立たせています。少女が奏でるエキゾチックな音色が、画家の色の選択に影響を与えます。このシーンを読みながら、週末になると井の頭公園でバイオリンで演奏する音楽家を描き続ける画家、沖元かおるさんを思い浮かべました。

WinterColors_Cover The cover of WINTER COLORS illustrated by Malena Stojic

ところで、小説の表紙には、髪の毛が一部金色に輝いているモデルの横顔を描いたイラストが使われています。ページをめくると、裏表紙の説明には、表紙デザインMalena Stojicとあります。一方、小説の中にも、同じ名前のMalena Stojicという女性が登場しているのです。小説の中では、画家が20代のとき、ロンドンで水彩画の手ほどきを受けた若い女性がMalenaで、画家はこのセルビア出身のアーティストMalenaを深く愛していた、という設定です。 ここでも、はからずも先に国境を越えて生きる人物が、後から国境を越えてきた人物を手助けするというモチーフが、さりげなく繰り返されていることに気が付きます。

この女性には、実在のモデルがいるようです。実名はManya Stojicという方で、セルビア出身でロンドン在住、日本でもあめ!という絵本(マニャ ストイッチュ作となっています)が出版されています。この絵本が、2000年にThe New York Timesが選んだ子供の本10冊に選ばれた、ということも小説の中の記載と一致しています。この絵本では、あるとき、アフリカのサバンナに雨が降り出します。すると、サバンナに住む、サルやライオン、シマウマ、サイ、ハリネズミたちは、乾季の終わりを知り、雨がもたらす恵みを喜びます。雨や日照りなど、自然現象の前では、人種や国境など関係ない、とも受け取ることができます。そこには、WINTER COLORSとも通ずるメッセージが込められているようです。

よくできた一枚の絵が、いろいろな見方で、いろいろな楽しみ方できるように、よくできた小説も、いろいろな見方で、いろいろな楽しみ方ができるのかもしれません。

松枝美由紀展に行ってきました

松枝美由紀展を見にギャラリーあづまに行ってきました。

銀座四丁目の交差点から、一つ先の路地を入り、4月20日にオープンしたばかりのGINZA SIXの少し手前に、ギャラリーあづまの看板と松枝美由紀展の案内を見つけました。

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通りから、ガラス越しに、正面の壁に展示してある、大きな絵が見えました。展示室に入ってみると、画面全体に、ピンク色の花びらや、緑の葉、赤い葉がちりばめられており、その背後には、人が手を広げている姿が描かれているようです。一面に咲く花の中で、花の精が喜びのダンスを楽しんでいる姿のようにも見えました。

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階段を上って、二階の展示室にも、大きな絵が展示されていました。やはり植物のモチーフがちりばめられた中に、女性の姿が描かれています。こちらの絵のタイトルも白日夢。植物の豊饒な実りの喜びを、女性の姿を借りて、擬人化して表現しているようです。

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二階では、作家の松枝さんから直接お話しを伺うことができました。この絵にちりばめられている、丸い形のものはリンゴをモチーフにされた、とのこと。

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松枝さんのお話では、リンゴや植物の葉を描きながらも、あまり写実的には描きこまないようにしているそうです。かといって、全くの抽象化やデザイン化するところまで、行くつもりもない、というご様子。その中間的なところで、どんな絵ができてくるのか、そのプロセスを余裕をもって楽しんでおられるようにも見えました。肩ひじを張らない、明るい色調の組み合わせと、ゆったりとした配置が、おだやかな雰囲気を醸しだしているように感じられました。

松枝さんは、5月3日から、国立新美術館で開催される、国展にも大作を出展されるご予定とのことです。